紛失物

投稿日:2014年5月12日

大事な物を失くしてしまった体験がありますか?

出てこないだろうとあきらめた物が出てきたことがありますか?

最近思いがけない体験をした生徒のことを今日はお話するのですが、それに関連して、懐かしい思い出が浮かんできました。背景の文化がわかります。

もう何年も前のことですが、ある時、シドニーのハイスクールの校長先生たち10人ほどと日本を旅しました。生徒たちとの旅よりも、ずっといたずらでびっくりすることがたくさんあったのですが、まあ、なんとか無事に終わり、最後、箱崎でチェックインを済ませ、空港に向かおうとしていた時のことでした。

一人の校長先生が、「パスポートが入ったバッグをタクシーの中に置いてきてしまった!」ということ。空港の管理をしているところに何とか探せないかと頼み込んだのですが、「4万台を越えるタクシーから探せると思いますか?」と、軽くいなされてしまいました。「方法は、無いですよ!」と冷たくも。

再発行されるまで、数日一緒に東京に残らなければならないことを覚悟しました。

それから30分ほど経った頃でしょうか。他の校長先生がたは、そろそろ移動の姿勢に入られる頃。大勢の中を、黒い鞄を振り上げながら、「どなたか、この鞄に心当たりがありますか〜??!!」と叫びながら歩いてみえる方があります。

「僕のバッグ!!!」とその校長先生は飛び上がり、人にぶつかりながら、大喜びでそちらに駆けて行かれました。

そのタクシーの運転手さんは、空港を出て高速に乗ったところでそのバッグがあることに気が付き、次の出口で出て、わざわざ、空港まで戻ってきてくださったとのこと。

この校長先生は、それまでも日本が大好きだったのですが、これ以後は、熱烈な日本信奉者に。世界にこんなすてきな国は他に無い、と。私もすばらしく誇らしかったです。

次は、メキシコで起こったことです。

大学の教室に傘を置いてきたことに気付き、戻ったのですが、傘はありませんでした。その間、10分も経っていなかったでしょう。誰に聞いても、知らないということ。傘1本なら、そうたいしたことはないのですが、その傘は、私にとっては特別な意味のあるとても大事なものだったのです。

結局、その傘は、出てきませんでした。ある時、教授にその話をすると、彼女は、こう言いました。

「忘れ物をした時は、それを誰かにあげたのだと思いなさい」と。

財布を教室に置き忘れてもなくなることがないような国から来た私には、この言葉は、衝撃的でした。そうです、確かに、忘れたのは私です。それは、自分の責任。その後どうなろうと、仕方のないことです。でも、それだけでなく、この概念が、何とも新鮮だったのです。

盗まれたと思うから、悔しいし、なんともやるせなくて寂しく、クシュンとしていた私の気持は、いっぺんに晴れました。「ああ、私のあの傘を喜んで使ってくれる人がいるんだ」、と。

ということで、よく忘れたり失くしたりする私は、それからずっと、そんなふうに割り切っていました。だから、失くした物が出てきたら、特別に嬉しくなります。失くしたものが届けられたということが何度かあるのですが、それは、またの機会に。

さて、生徒の話です。先月のキャンベラの旅行中、出発の前日に、イースターショーに行き、財布を失くしてしまったという生徒がいました。一応、ホストマムに届け出ていただいたけれど、自分で突き止められないかやってみたい、ということ。

ビジターが100万人にも達しようというこのショーで失くし物? 出てくるほうが奇跡。

それでも試みてみたいというその気持にまず感心。

ネットでコンタクト先をいろいろ探してみていることにも感心。

そして、それらしきところにメールを送ってみることになりました。どうやって書いたらいいかということなので、そこで、正式な依頼のメールの書き方を練習。

学習したことをすぐに使いながら一生懸命メールを作成している姿に、また、感心。

なんと、翌日に、それに対する返信がありました。別のところにコンタクトを取るように、と。

昨日覚えた正式な手紙の書き方を使ってまたメールを。よくがんばること!

そんなやり取りが、何度か旅行中と旅行後に繰り返されたものの、ショーは終わりを迎え、それで終わりかと思ったら、また、別の場所に今後は連絡するようにという連絡が入りました。

私は、イースターショーのオーガナイザーのこの誠意ある姿勢にも、感動しました。それでも、出てきたら奇跡だ、とその時もまだ思っていました。

ところが、遂に出てきたのです、遂に。そのお財布が!  Bravo!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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