ICETの教育がめざすところ
投稿日:2015年1月28日
2015年度のDHSのDiaryが手渡され、それぞれの時間割を書き込みました。
パスポートが生徒たちの国際的な身分証明書であるならば、このDiary(ダイアリー)は、この1年の学習/生活体験の象徴となるものです。これから、毎日、いろいろな授業や行事のことがぎっしり と書き込まれていきます。
1週間の時間割には、ICETの教育内容のすべてが凝縮されています。
人々が、教育に求めるものは様々です。
ICETには、何を求めてみえるのでしょうか?
未来の活躍と成功のための土台? 高いレベルの大学への進学手形? 高度な英語でのコミュニケーション能力? 国際的な視野の拡大?
そうしたものは、結果的に副産物として伴われるもので、ICETの教育が直接にめざしているものではありません。
ICETの教育がめざしているものは、
学ぶ事ことの楽しさを体感すること
自分を心から好きになり誇りに思うようになること
生きることに、そして、社会に貢献することにパッションを持つこと
そして、自分と社会の幸せを作り出すこと、です。
それがあって始めて、自分の可能性を最大限に広げたいと願うようになり、より高いもの、より良い成果をめざすようになります。結果として、高度な学習結果を修めることが可能となります。
Holistic(ホーリスティック)という言葉があります。Holisticというのは、物事のすべての面を包括的に扱うことを意味します。
これを教育に当てはめると、学校の成績だけで示される学術的なものだけを求めるのではなく、環境や自然との豊かなつながり、周りの人々との良い協力関係、そこから自然に生まれてくる良いエネルギー、体験に基づく生きることへの理解、個々の生徒の特質と学習スタイル、生徒・保護者・先生の三つ巴の協力関係、心身の健康、社会的・文化的理解、個々の心理的な発達など、一人の人間として良い成長を遂げるための要素を総合的に取り入れることで、人間は自信を持ち、自然に心身の全体をのびやかに伸ばしていくことができる、ということになります。
ICETのプログラムがめざしているのは、このholisticなアプローチです。
誰もが、ここに来た目的の第一にあげるのは、英語を上手に使えるようになりたいという願いです。その英語学習を例にとってみましょう。
英語力を身に付けるためには、英語の勉強をするのではなく、社会体験・文化体験・学習体験を通し、その基本となっている言語を感覚で汲み取り、さらに、授業という形でフォーマルな形で言語を磨き、学術的なレベルに高めるという方法です。これで始めて、英語という言語が、学習対象ではなく、生活し、幅広い学習を可能とする道具として活用できることになります。
一口に英語といっても、そこには、いろいろな種類の学習があります。英語は、読む、聞く、書く、話すの4分野がそろって、始めて使えるという段階になります。どのいう状況においてどういうふうに英語を使えばいいのかという機能的なものもあれば、ニュースを聞き、理解し、議論できるようにするものもあります。本や新聞や雑誌などを読み、ポイントを理解し、前後関係を掴み、全体像を把握するようなものもあります。手紙やエッセイを書くものもあります。
ICETの英語学習は、大学受験のためのものではありません。英語圏の学校で学習が可能となるため、日本の大学や英語圏の国の大学で講義が受けられ、エッセイを書いたりレポートを書いたりすることができるため、そして、企業に入って戦力となることができるための英語の訓練です。将来、国際的な場で活躍ができるための土台作りをするものです。
そうした内容が、この時間割に組まれています。
自国と違う文化は、そこでの体験を通して習慣や考え方や価値観の違いを学ぶことができます。しかしながら、その文化やその国の精神性を理解するに至るには、長い年月がかかります。そして、ただ暮らしていただけでは、到底その理解に達することはできません。そうした深い理解は、体験の上にさらに体系的に学ぶ必要があります。そういうこともこの時間割の中に含まれています。
ICETの生徒たちは、文化や歴史の表面と素通りするだけでなく、歴史の中のできごとが社会全体に与える影響やその後に続く底流に触れる試みをします。それも、この時間割の中に含まれています。世界の情勢、先進国と発展途上国の格差、支援と必要性のギャップ、地球と地球市民の共存と保全を学び、将来自分がどんな貢献ができるのかといったことを真剣に考えていきます。それも、この時間割に含まれています。
生徒たちは、一人一人みな学びの方法が違います。性格も能力も違います。そうした特性を活かしながら、同時にどのようにさらなる発達を促せばいいのか、生きるということはどういうことなのか? 自分は誰なのか、自分と本気に向かい合う時間もここに入っています。
DHSという学校の生徒として授業を受けるという文化的な体験と学習の積み重ねもこの時間割の中に入っています。
以上にあげたようなことは、ICETのプログラムに包含されているごく一部でしかありませんが、留学中の生活の中で、単発に、あるいは、偶然的に学ぶのではなく、文化・十代後半の人間形成・言語・リーダーシップ・世界市民としての自覚などを総合的に、そして、体系的に学べることを意図したものです。
舞台があり、大道具と小道具はふんだんに用意されています。あとは、それぞれが今まで培ってきたものを土台に、思う存分に自分のパフォーマンスに励み、すばらしい物語を作り上げていくだけです。練習に励み、物語の内容を良いものにすればするほど、本人の達成感も満足感もまた誇りも深まり、もたらす感動も大きなものとなります。