IELTSは日々の英語学習の進歩を示すもの
投稿日:2015年2月1日
教育と試験は、(それをどう見るかは別として)、ワンセットです。
日本の場合、その最たるもののひとつが大学入試であり、昨夜(シドニーでの放映は今朝)のNHKのニュースで、大学の入試改革案のことを報道していました。思考力と応用力を発達させるために、センター試験を廃止し、1度だけの試験ではなく数回の試験を通して、学生の能力を総合的に評価できるようにすることが改革の目的である、と。
大学受験の内容や方法が変わらない限りは、高校・中学・小学校の教育内容や方法も変わらないことは、もう何十年も言われ続けていることです。
実際に、若者たちが思考力、実践力、応用力を付けていくことは、世界を舞台とする時代には、欠く事ができません。
それだけでは足りず、自立、自律、問題解決能力、幅広い知識を得た上で多角面から考えて決断を下すことができる能力、コミュニケーション能力などを付けていくことが、将来の活躍の選択肢や場所を広げることになります。
この改革の主旨に対する大学側の反応は、賛成というものと、試験を用意し面接などの時間を設けることには時間や審査官の確保など物理的に問題がある上に、審査官の主観が混じる評価をどこまで公平にできるかという問題があり、現在の入試方法を変えることは歓迎しないという回答もありました。それでは、求められている理解力を持っているかどうかを見極められないというものもありました。
試験の目的のひとつは、履修したことをどこまで理解しているか、どこまで使えるようになっているか、そして、改善できるところ、強化すべきところはどこかということを見るためです。しかしながら、どんな試験もその全容を測ることが不可能であるにも関わらず、それが一人の人間の学習能力あるいは知的能力のレベルを測るものとして使用されてしまうところに問題が発生してきます。
小学校や中学校で、試験の成績が悪いという理由で、自分が能力のない人間だと決め込んでしまう子どもたちが多いのは、そのひとつの例です。
そして、試験の結果というものさしが、学力を見る唯一のものとなってしまうところに危険があり、それを社会が信奉してしまうと、それは悲劇となります。(このことがどういう意味を持つかという事は、徐々に触れる機会がありますでしょう)。
制度とかシステムは、その中にあると、それが唯一の方法に見えてしまい、どこかへんだと思っても従わざるを得ないことが往々にしてあります。制度とは、誰かが何らかの目的で作ったものであり、制度は、時代により、社会のニーズにより変わるもの、変えられるものであるので、それに唯々諾々と従うのではなく、それをどのように上手に利用するかということを考えることが大事です。
留学は、そういう意味でも意義があります。国が変われば、そして、文化が変われば、こんなにもやり方が違うのだということを身を以て体験することができるからです。
留学中にも試験はあります。上記のようなことを踏まえた上で、試験を子どもたちのさらなる学習力と成果、そして、意欲を募らせるために使うことをICETの教師たちは常に心がけています。DHSでも、全体と比べての相対評価ではなく、個々の生徒の努力と学習方法と伸びを見る相対評価方法を取っています。
英語力を伸ばしていくためには、現在生徒たちが持っている知識や応用力かいかなるものなのかを知るのは、教師にとって、不可欠な情報となります。それがあって始めて個々に向けた学習計画や教授法の設定が可能となるからです。
英語の試験で、日本でよく知られているのは、TOEICとTOEFLです。
TOEIC- The Test of English for International Communication は、国際的な環境の中で就業している際に必要とされる日常英語を審査するものです。アカデミックなものではなく、仕事環境のための試験です。日本では、そのことが理解されているのどうかよくわかりませんが、大学という学術的な場での入試の材料としていろいろな大学で採用されています。
TOEFL- Test of English as a Foreign Languageは、アメリカの大学に行く場合によく使われます。130カ国で実施されているということで、オーストラリアにもありますが、あまり使われていません。
オーストラリアでよく使われているのは、IELTS – International English Language Testing Systemです。イギリスのケンブリッジ大学で開発され、世界中の大学や学術機関での勉学や研究、また就労のためのコミュニケーション能力を見るものです。英語の4技能(聞く、読む、書く、話す)を一人合計4時間近くかけて審査します。
日本の大学が、これからIELTSを重視するようになるという情報も入ってきています。そうであれば、生徒たちが留学中のその方式に慣れておくことは、メリットがまたひとつ増えることになります。
ICETでは、生徒たちの英語力の進歩はいろいろな方法で表示されます。クラスの中での受け答え、授業中のディスカッションへの参加と言語の使用、語彙や言い回しのミニ・テスト、学期末の考査、リサーチの結果、エッセイの書き方や内容の濃さ、プレゼンテーションの内容と発表、宿題のできばえなどなど、いろいろなものがあります。IELTSもそのひとつです。
ICETには、IELTSの公式な審査官の資格を持った先生が2名います。公式な会場で受験するには1回200ドル以上の受験料がかかります。でも、幸いなことに内部に審査官がいますので、試験を授業の一環として取り入れ、進歩ぶりを客観的に測定し、それを授業に反映していくことができます。
注意していただきたいのは、試験のための授業という意味では全くありません。その逆です。英語という言語を身に付けるために、国際的な基準で求められていることを背景に置きながら、日常の学習を国際的に通用するものになるよう強化していくことができる、という意味です。
ICETの生徒は1年に3回、様々なIELTS用の教材を基に作成されたテストを行います。テストはオーストラリア到着後の1月/2月と、ちょうど半ばの5月か6月、帰国前の11月に実施されます。明日月曜日に最初のテストがあります。テストが終了した時点で、生徒の現在の英語力の概要がわかりますので、先生と面談し、相互に現在の状態を確認し、これからの学習計画を考えて行きます。
生徒たちは、目標にすること、日々の中ですべきこと、さらに向上するためのエクストラでできることなどについて、それぞれに合った細かい指示と情報を得ます。
英語学習は、数時間練習したらすぐに上達するという類いのものではありません。日々の努力の継続を必要とします。しかしながら、日々の努力は、確実に実を結んでいきます。ということは、どこから出発するかは問題ではありません。どれだけ伸ばすことができるかに視点を置く事が大事です。
目標と、日々の努力が進歩をもたらすものであることを生徒たち自身が明瞭に確認することができ、さらに向上をめざす材料とすることが大事です。