ちょっと大人の週末 (2)
投稿日:2011年6月26日
12年生とのキャンベラへの旅は、1年目の時とは違う趣を持つものとなりました。
この旅に関するリホさんの感想が、生徒の欄のほうに掲載されています。ご一緒にお読みいただければ幸いです。
2年前に彼女たちがした旅とは異なる場所もありましたが、同じ場所であっても、内容をずっと深く汲み取ることができるようになっている自分たちを発見することは、生徒たちにとっても嬉しいことだったろうと思います。
まず、一番嬉しかったことは、30年前にこの国に来たばかりの時にテレビで放送されたドラマのDVDを見つけることができたことです。「For the Term of his Natural Life」という本に基づいて同名で制作された大英帝国からこの地に流刑となった囚人の運命とその時代を描いた映画です。階級とか「位」の権力を振りかざす人間と自由を持てないまま恐怖の中に暮らす人々、富を所有する人間としない人間を通し、社会の非情さ、残酷さ、理不尽さを描いたものです。
権力者たちの奸計が渦巻く中、あくまでも正義を貫こうとする人々の勇気、権力の横暴に立ち向かう不屈の精神が光ります。時代を経た今、世界のどこを見ても、人間の醜さと美しさは、あまり変わっていないように思えます。
もともと大航海時代に強い関心を抱いていたので、このドラマによって自然に私の興味は植民地時代に引き込まれました。その後、ずっと、この映像を探していたのですが、見つけることができないでいました。「映像の博物館」で係りの方が奥のほうから出してくださったときには、宝物を手にした気分でした。
旧議事堂は、私は一度も訪問したことがなかったので、新しい発見ばかりでした。
首相の執務室の簡素で質素であることにまず驚きました。家具調度は極めて質素なもの。壁にある絵は、ボッシュやゴヤの作風に似た風刺絵や魂や人間の心の影の部分を描くアーサー・ボイルの絵が一幅あるだけでした。
「国立美術館から世界のどんな名画でも借りることができるのに、ここを最後に使ったホーク首相が選んだのは、この絵だけだった」という説明がありました。
「彼は、華やかな表向きに反して、この絵の前で夜遅くまで一人で考え事をすることを好んだ」という説明に、報道でわれわれが知る部分や受ける印象というのは、本当に一部でしかないことを新ためて悟った次第です。
執務室の奥には、シャワーと洗面所があるのですが、普通の民家のものよりも粗略なもの。インディラ・ガンジー氏の訪豪で急いで女性用に改造したというものがありました。
今現在の国会でも、議決され英国女王の署名が必要なものは、それ専用の箱に入れられて英国に送られるということを知り、改めて驚きました。
政治家とメディアの関係についても学ぶことができました。
デモクラシーの歴史を展示している博物館では、オーストラリアの成り立ち、そして、200年の間にどのように民主主義を確立されてきたか、外交問題など、写真と図式をふんだんに組み合わせた電光パネルでとてもわかりやすく説明されていました。
ひとつひとつのボタンを押しながら、録音されている英語の説明に熱心に聞き入っている生徒たちの姿に、ひとりほくそ笑む私でした。
成長したこの姿を観るだけで、この旅の価値はあった、と。
二重が、瞬間的に三重になった虹の下を走るところからこの旅は始まりました。その虹は、彼女たちが自分の望む未来に渡っていく橋であるように感じられました。そして、それに続く3日間は、彼女たちの跳躍力を充分に感じるものでした。
別のニュースです。
ヒカル君は1500mでゾーンの2位に入りました。この次は、地方大会です。タイキ君は風邪で残念ながら出場することができませんでした。