喪失から創造へ 2
投稿日:2011年10月7日
「創造の時」となった、Appleを去ってからのジョッブズ氏の5年間。
NeXTとPixarの設立と続きました。Pixarは、アニメを世界で始めてコンピューターで制作することに成功した会社です。
めざましい進出を果たしたNeXTが、なんとAppleに参入され、ジョッブズ氏は、再び古巣のAppleに戻ります。なんという奇妙なめぐり合わせでしょう。
「もし、Appleを首になっていなかったら、このすべては起っていなかったと思う。ひどく苦い薬だった。でも、患者は必要としていたんだろう」とジョッブズ氏は、どこまでも自分と向かい合っています。
「人生には、頭をレンガで殴られることがある。でも、信念を失ってはいけない。あのとき、ぼくがやっていけたのは、夢中になってやれるものがあったからだ。本当にやっていることが好きだったからだ。きみも、本当に好きになれるものを見つけてほしい。仕事でも、恋人でも。」
「まだ見つけていないのなら、探し続けること。妥協してしまってはいけない。」
3つめの話し。死について。
ジョッブズ氏は、17歳のときにめぐりあった言葉がありました。
「毎日がこれが最後だと思って生き続けたら、それが正しいものになる日がいつか必ずやってくる」といった感じの内容だったそうです。それからずっと33年間、毎朝彼は鏡に向かい、「今日がその日なら、今からしようとしていることを自分はするだろうか」、という問いかけをしてということです。そして、「No」という答えが続くときは、何かを変える必要があるとわかる、と。
「自分が死ぬときがじきに来るという観念は、自分の人生の中で大きな選択をする最高の道具になった」
「なぜなら、外からの期待、すべてのプライド、恥や失敗に対するすべての恐怖心、そういったものは、死を前にしたら、みなどうでもいいものであって、本当に大事なことだけが見えてくる」
「自分が何かを失うかもしれないと考える罠に落ちることを避けるためには、自分は死ぬんだということを思い出すことが最も効果的。きみはすでに裸なんだ、自分の心に従わない理由は、何もない。」
このスピーチが行われる1年ほど前、ジョッブズ氏は、膵臓に腫瘍があり治療不可能なものなので、数ヶ月の命しかないと宣告されました。ドクターのアドバイスは、「家に戻って、死に向けた用意をせよ」というものでした。 丸1日「死」と向かい合い、その日の夕刻、彼は、バイオプシーをしました。治療可能の稀な癌だということがわかり、ドクターは喜びで涙を流し、ジョッブズ氏は、手術で命を取り留めました。
「誰も死を逃れることはできない」
「死は、人生の唯一最大の発明。死は、人生を変える要因だから。新しいものに道を開くために古いものを取り外すもの」
「きみたちは若い。でも、いずれ年をとり、古いものとして取り除かれる」
「人生を無駄にするな。誰かの人生を生きるのではなく、教義に囚われることなく、自分の心と直感に従えよ」
「本当になりたい自分が何なのか、わかっているはず。他のことは、すべて二次的なこと」
「The Whole Earth Catalog」 という雑誌がジョッブズ氏の若い頃の愛読書でした。コンピューターが存在したい当時の若者たちの聖書というほどに大事なもので、今でいえばGoogleの存在にあたいするものだったということです。
時代が移り変わり、「田舎の朝の道で、冒険心のある者なら、ヒッチハイクしている自分がいるような写真」が、その雑誌の最終号のバックページに掲載されていました。
そこには、「Stay Hungry. Stay Foolish」という言葉が載っていて、この言葉は、ジョッブズ氏が、その後、ずっと自分に言い聞かせてきたものだということです。
そして、スタンフォードを卒業する学生たちに向けて、
「新しく始めるきみたちに望みたい
Stay Hungry. Stay Foolish」
とスピーチは結ばれています。
6年後の2011年。ジョッブズ氏の鏡の前の問いかけが、本当に最後のものとなる日がやってきました。本当に何の悔いもなく、1点の曇りもない自分を鏡の中に見出されたことでしょう。地上に残る大勢の人々に大きな勇気と感動を残しながら・・・
「自分の心と直感」に従って生きる。勇気の要ることです。
でも、その勇気が持てた人のみが、本当に「自分を生きる」ことができるのでしょう。
Mr. Jobs、勇気と感動をありがとう!
Jobs氏のスピーチをお聞きになりたい方は、
http://www.youtube.com/watch?v=D1R-jKKp3NA
スピーチの原稿の原文は、
http://news.stanford.edu/news/2005/june15/jobs-061505.html