目的5

投稿日:2011年11月5日

 毎日がすごいスピードで過ぎていきます。

 タイムリーな記事がミヅキさんから送られてきました。

 「あっという間に11月に入って、帰国まであと35日になりました。

 今は、自分の中でいろんな気持ちがあります。あと1ヶ月頑張ろうとか、目の前まで見えている日本に早く帰りたいなあとか、毎日毎日いろんな気持ちが入れ替わりながら生活しています。

 約9ヶ月間オーストラリアで生活して、辛くて辛くてどうしようもなかったこと、楽しくて毎日が充実しすぎて日本に帰りたくないって思ったこと、辛いことも友達と一緒に乗り越えたこと、今まで経験したことのないことが自分の中でたくさん起こりました。

 あと1ヶ月、自分とどう戦って行くか、自分で決めた目標に向かって悔いのないように頑張りたいです!」 by Mizuki

 ミヅキさんのこの気持ちは、恐らく、留学生のみんながこの時期に多かれ少なかれ感じている複雑な境地を表現しているものと思います。

 1年間の外国での生活は、楽しくもありますが、相当に苦しい思いを乗り越えなければならないときもあります。その度合いは、それぞれに違います。でも、帰国が視野に入った途端に、心の中にいろいろな動きが出てきます。去年までのこと、今年のこと、帰国してからのこと、様々な状況が脳裏を駆け巡り、ここにいることが現実ではなくなってくる感覚が起こってくるようです。

 残りの時間に、生徒にはまだいろいろな体験が待っています。彼らを囲む人々との間にも、別れを控えた感情の波がすでに始まっています。テストがあり、成果を手にし、卒業式があり、大勢の人々に別れを告げ、感極まった状態で日本に戻ります。 

 1年間離れていたご家族の皆様との再会、そうした高ぶった感情の波が続いた後には、「帰国後シンドローム」と呼んでいいのではないかと思うほど特別な虚無感に襲われます。それを感じない生徒もいれば、半年以上力が入らない生徒もいます。日本の生活がいやとか、馴染まなくなってしまった、というのではなく、現実としての環境に自分を置けなくなることがあります。

 これは、とても不思議な感覚なのですが、日本人が帰国した際にのみ起ることではなく、海外に1年出たオーストラリアの青年たちにも起ります。

 私の場合には、20代後半という生徒たちの年齢からは10年もの隔たりがあるのですが、それでも、4年余の留学から日本に戻った際には、本当に「竜宮城」から戻った状態であり、決まったものがあるわけでもなかったので、どこかに属すということがとても難しかったです。幸いにも、本を執筆するということがあり、そこに没頭することで救われたように想います。

 ここ20年間、日本に帰国した後に感じる生徒たちのいろいろな想いを知るに付け、十代の子供たちのこの1年の重みは、20代だった私の4年の重みとそう違わないのではないかと考えます。別な文化、まったく違う別の環境からの変化に、自分の気持ちの調整がついていかないのかもしれません。

 生まれ育ったところであり、家族がいて、みんなを知っているのに、そこに再び戻ることに何の問題があろう、と思われるかもしれません。でも、あるのです。調整ができない時間が。現実の物理的な環境に置けない自分がそこにいるのですね。

 だからこそ、すぐに自分を現実の世界と結びつけてくれるものが要ります。生徒たちは、みな、学校環境に戻ります。そこには、確実に歩まなければならない道があり、こなしていかなければならない学習があります。

 それが義務となったら辛いだけです。オーストラリアでの生活が「夢」だった、ということになってしまいます。義務にしないためには、そこに自分の目標があり、その裏に大義と志と目的があることが自分の日々を生きたものにします。

 今、こちらで起こっているのは、ケアンズの本当に特別な1週間が終わり、再び、教室の中での学習に集中することの難しさです。すぐに切り替えが効く生徒もいれば、湧いてくるやる気を感じられなくなり、自分を叱咤激励している生徒もいます。

 日本に帰国した際に、この虚無感が起ることは仕方のないこととして、それを長引かせないことに留意が要ります。それを防ぐ唯一の方法が、目的、目標を持つことです。特に、なぜ、次の道に進んで行くか、その道を選択するかの目的を自分の意識として持つことが大事な要素となります。

 夢中になれるものがあれば、それが、ベストの解決策です。

 生徒たちが帰国の途につくまでに、できるだけの目的意識を持てるようにしたいと思っています。

 それをどう維持するかの部分で、ご家族の皆様のご協力が必要となってきます。それについては、また、別な折に触れましょう。

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