Paradigm Shift

投稿日:2012年1月11日

 自分に何かのcommitment を課そうとしたら、それまでの考え方、やり方を変える必要が出てきます。

 どんなに新しいことに挑戦しようとしても、それまでの方式、それまでのものの考え方を踏襲していたら、新しいことから得られることの成果は、限られたものになってしまうからです。

 たとえば、サッカーをしている人が野球をすることにしたとしましょう。ゲームのルールが違うだけでなく、体の動きもスピードも、チームの他の人々との連携の仕方も、なにもかもが違います。自分のすべての機能の使い方をそれまでのものから別のものにシフトしないと、技能も磨くことも発揮することもできないし、チームに貢献することはできません。サッカーではこうだと言ってみたところで意味はなく、結果として、自信を失い、楽しさも半減します。

 留学もこれによく似ています。留学は、外国に暮らすということです。

 今みなさんが立っている基盤は通用しなくなります。違うパラダイムを適用する必要があります。

 なぜならば、今、囲まれているものは、すべて一旦失われるからです。一緒に住む人が違う。言葉が違う。食べ物が違う。シャワーの浴び方にも制限がかかる。ベッドが違う。自分の部屋は自分の部屋のようでそうではない。四方八方、どこを向いても知らないことばかり。コンビニはない。バスの乗り方もわからない。学校の授業のやり方はまったく違う。

 今まで日本で習い覚えてきたことのほぼ全部が通用しない、という状況に陥ります。つまり、動きが取れなくなるということです。

 さて、こういう変化が起こったときに、日本のやり方、考え方、今まで自分が意識せずに慣れ切ったものをそのまま持ち込むと、抵抗だらけの生活になります。

 日本はすごい国なんだ、と実感するのは大いにけっこう。そこから、日本の国、日本の文化に対する尊敬が生まれ、日本人に生まれたことを感謝し、自国に対する愛も育っていきます。しかしながら、日本での生活習慣、それまで自分やっていた自分のやり方に固執することは、恵みを逃してしまうことにつながります。

 ここで活きるものがひとつだけあります。「姿勢」です。

 好奇心、向学心、世界のことを知りたい、英語を上手につかえるようになりたい、たくさんの人々と交流したい、という気持ちや願望を行動に出す姿勢です。この姿勢が当然、こちらでの生活に必要であり、そして、どれだけ持っているかということが見えてきます。

 あなたという人がどんな人なのかをこちらの人々と分かち合う姿勢が、あなたの1年を創っていきます。自分が慣れている方法を一旦捨てるということは、恐怖であり、勇気の要ることです。でも、その過程において、「あなた」の本当の姿が見え、あなたが本当に生きたい自分が出てきます。それがあなたのかけがいのない財産となるものです。

 世界に一人しかいないあなた。そこに光を当てることに留学の醍醐味があるのです。

 グローバル社会で生きるということは、他の民族の人々、他の文化背景を持つ人々と共生するということです。違う文化や習慣をより深く理解し、それに敬意を示し、自分の文化も知ってもらい、お互いの違いを理解しながら、でも、同じ人間として地球全体に貢献することをめざすことです。そういう一人ひとりが手を取り合って、この地球社会を創っていくということです。

 といいながらも、グローバル社会では、私たちは、自分たちの全くあずかり知らないことに巻き込まれ、その結果として日常生活の中でいろいろな変化を受け止めなければならないこともたくさんあります。たとえば、2012年が始まったばかりで何が起こっているか:

 アメリカの軍備のアジア太平洋地域ので強化によって、日本やオーストラリアは中国との関係に微妙な立場に置かれます。リーマンショック以後の世界経済は、一触即発の状態にあり、そこに加えて昨年からのユーロの金融危機は、新年になってますます深刻さを増し、それを反映する円高は日本の産業をとても苦しいものにします。好調なオーストラリアも何らかの影響は避けられません。ホルムズ海峡でのイランによる封鎖脅威はすでに石油価格を暴騰させています。オーストラリアの3人の環境保護活動家が日本の捕鯨船を護衛していた船に乗り込み逮捕され、おそらく日本に連れていかれるかもしれないという事件は、ここ数日、オーストラリアのトップニュースのひとつです。これは、引渡しが行われるということで一旦解決にはなりましたが、捕鯨に関する議論を沸騰させています。

 ここにあげたことは、多くのできごとの中のわずかの事例に過ぎません。でも、世界では、いろいろなことが起こっています。みなさんの未来にどのように関わってくるのかは、これから答えが出てくることです。そして、答えを出すことです。

 だからこそ、高校生という今、自分の生き方の選択を意識的にしていくこと、そして、他の文化の人々との共生の土台を築いていくことがなによりも大事になってきます。

 自分が暮らす環境において、言葉も文化も習慣も違う人々との交流からどれだけの恩恵を得ることができるか、与えることができるか、それは、あなた次第です。新しいアプローチの仕方、考え方が必要なのだという意識がなければ、知っているものにしがみつこうとします。

 自分の中での意識改革、パラダイム・シフトが必要なのです。パラダイム・シフトなどという学術用語を使うと、いかにも難しそうに響きますが、実は、とっても簡単なことなのです。

 たとえば、お手伝い。16歳ともなれば、家庭内の仕事の分担はあるのが当たり前。日本にいる間に甘えるだけ甘えてお母さんにしていただくのか、それとも、留学に出る前にできるようにするのか。保護者の方も、向こうに行ったら苦労するだろうから、今のうちにできるだけのことはしてあげようとされるのか、それとも、互いの行動の軸を子供の自立を高めることに置かれるのか。その軸の移行がパラダイム・シフトです。

 それが、これからの姿勢と行動に出てくる元となるものです。自分の生活の基礎となるパラダイム・シフトは、今日からできることです。

 

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