現実との遭遇
投稿日:2012年2月6日
赤ちゃんは、産まれた瞬間に、生命を維持することを学びます。
呼吸する。泣く。おっぱいを吸う。
この3つを短時間でマスターします。これをマスターしないと生きていけません。
留学は、赤ちゃんが産まれた時に体験したことについで、衝撃的な体験だろうと思います。
言葉、食べ物、慣れた居心地のいい自分の空間、周囲の環境、人間関係、痒いところに手が届く親御さんのケア、好きなことが好きなようにできる時間・・・ そうしたものすべてが一挙に剥奪され、丸っきり幼児に戻ったような、それだけではなく、手足を縛られ、口ぐつわをはめられた状態に置かれます。耳に入ることは、なんとなくしかわからない。わかったようなわからないような、だから、不安。疑心暗鬼にもなる。言いたいことはほとんど言えない。言えないから欲求不満が残る。
そんな状況にストレスが起こらないはずがありません。
静かな時間を持ちたいのに小さな子供が来て離れない。休日の朝、ゆっくりしたいのに7時半には朝食。夜8時となればみんな寝室に入ってしまいどうしていいのかわからないし、そんな状態に怒りさえ感じてしまう。ホストシスターに話しかけてもろくな返事が戻ってこない。ホストブラザーは自分の部屋から出てこない。子供がよく泣く。親が子供をよく怒る。食事の時の話に入いれない。食べ物がどうも口に合わない。家のインターネットを使っていいと言ってくれるけれど、スピードが遅い。遊びに来た親戚の子が自分のベッドの上ではね、散らかす。バスの時間がよくわからない。道を間違える。電話をかけようと思ってもなんて言えばいいのかわからない。単語でしか話せない。聞き取れない。語学力のない自分がいやになる・・・・
そんな時、どんなふうに対処したらいいのでしょう。
対処の仕方がわからないと、ストレスで、ボツボツが出たり、熱が出たり、頭痛がしたり。今日は、全身に発疹が出て、ドクターに行く場面もありました。辛さで涙が出る場面もありました。嫌気が差して笑顔が消えてしまう場面もありました。
留学の当たり前の毎日になってきました。
それぞれの状況によって対処の仕方は違いますが、基本的には、negotiate(交渉する)が常道です。
ストレスの根本は、自分がしたいこと、願うこと、と現実のギャップから生じるものなので、そのギャップが大きければ大きいほど、ストレスも大きくなります。ギャップを縮めるためには、自分がしたいことを周りに伝え、それが可能になるような状況を作り出すことに協力してもらうよう交渉することが一番の近道です。
でも、これが、日本人にはなかなかできません。がまんしてしまったほうが、簡単なのです。何も言わないほうが、らくなのです。
この交渉をすることが、コミュニケーションの1歩でもあるのですが、それは、初めは、大変な勇気を要することなのですね。
でも、今日は、「まずは自分でやってみる」という生徒がたくさんいました。それが大事です。
ホストファミリーも、先生たちから、「ところで・・・」などと持ち出されるよりも、直接に、生徒から、こうしたい、こうでありたい、と言われるほうがよほど嬉しいし、言われたら、できるだけのことをしてあげたいと感じるものです。
ともかくもやってみる。Have it a go! の精神でぶつかりましょう。