時代は流れる

投稿日:2012年5月20日

先週は、未来の世界像を予兆させるような象徴的なことがたくさん重なった週となりました。

欧州の金融危機不安で、世界中の株式市場が波乱を起こしている中、18日には、オーストラリアの株式市場だけで、35 billion(350億)ドルが消滅したとニュースでは言っています。オーストラリア一国でこれだけなら、世界中の市場を合わせたら、天文学的な数字になるのでしょう。

一国の数字だけでも桁が大きすぎて理解の度を超えるのですが、でも、投資していたものが価値を失い、将来に不安を抱える人々がたくさん出ていることはわかります。

ギリシャでもスペインでも、国家が破綻するかもしれないだけでなく、その日を過ごせるかどうかもわからないような人々がたくさん出てきています。ヨーロッパ全体、世界全体が、今後どうなるのか、銀行や金融システムが存続するのかといった大きな不安に包まれています。現存のシステムから違うシステムへの移行は間違いなく起こると言う人が増えています。

その一方で、Facebookがアメリカのナスダック市場に18日上場し、一夜にして大富豪になったことを狂喜している人々が大勢います。もっとも急激にあがったFacebookの株価は、終値は最初とほとんど変わりないところまで落ちたということなので、大富豪になったのは瞬間の夢で終わってしまったケースもあるのかもしれませんが・・・

Facebookは、7年前に世界に登場し、あっという間に世界中にいる人々をつなぎ、人々のコミュニケーションの仕方を大きく変えた交流ツールになりました。その共同開発者の一人、マーク・ザックバーグは、1984年の生まれといいますから、まだ、30歳前の若者です。世界で最も裕福な若者で、その富は、イスラエルやアルゼンチンが国家として得られる1年の収入に相当するものだということです。

何が正義で何か公平かなどということは、もはや議論にもなりません。

金融と言う投機的ゲームに乗るか乗らないか、乗るならどこまで安全に上手に乗っていけるか、その選択とプロセスと結果は、まさにゲームそのものです。

そのゲームの中にいなければ直接には関係ないことのように思えるのですが、実際にヨーロッパやアメリカで起こっている現実なので、こうした状況は、金融システムのあり方のみならず、国家のあり方、地球のあり方、世界のあり方を確実に変え、最終的には世界中のすべての人々に影響を及ぼします。すでに、地球上のすべての人々が否応なしにその渦の中に巻き込まれているわけです。違いは、それを意識するかしないかだけのことではないでしょうか。

今週は、シカゴでG8のトップが会議をもっています。リーマン・ショック以来、必死で、こうした大きな流れに歯止めをかけ崩壊をなんとか食い止めようとしていますが、難題は次から次と降ってきます。

インターネットは、物品の流通システムを大きく変えました。コミュニケーションの方法も大きく変えました。金融システムも大きく変えました。

そうした変化の蓄積と広がりは、今までの国家という概念を超え、人々の情報交換や移動や交流は国境を取り払っています。

一方で、「国家」は、今までもそうですが、ますますその包囲網を強化しようとしています。身近なところでは、先週には、オーストラリアのボブ・カー新外務大臣が訪日し、「情報保護協定」を締結しました。これは、去年の末にアメリカのオバマ大統領が訪豪し、国民にはまったく突然と思えるような米兵のオーストラリア常駐を決め、オーストラリアとアメリカの安全保障を強化する方針を公表したものに続くものです。

今回の締結は、アメリカ、オーストラリア、そして、日本の3カ国が安全協力に必要な機密情報を交換し、共有し、効果的にやり取りができるようにするものだと説明されています。仮想の敵は、北朝鮮であり、今後の中国の動きを視野に入れたものです。70年という年月は、歴史を如何様にでも変えることができるようです。

こうした一連の動きに、日本でもオーストラリアでも「安心と安全」を感じる人もいれば、なぜ、あえて中国を刺激するようなことをするのか、中国もアメリカもその武器を縮小することをなぜ考えないのか、という意見の人もいます。

オーストラリアにいて中国人と日本人が席を同じくすれば、オーストラリア人も日本人も中国人も分け隔てることなく友達になるのに、「国家」がそこに介入し国籍を強調した途端に、壁が存在することに気が付きます。人間同士の間には、壁が無いのに・・・

世界情勢が日々変わるようなすさまじい世界に私たちは生きています。

留学に来ている生徒たちは、国籍や国境を越えて国際社会の仲間入りをしました。「日本人」であることのアイデンティティはしっかりと自覚するようになっても、国家間どうしの力の対立によって生まれる偏見に惑わされることなく、自分の友情の輪を大きく世界に広げていって欲しいです。

10年後、今の生徒たちは20代の後半ですが、留学という特殊な体験をした彼らは、若くても社会の中で必ず重要な役割を果たすようになってはずです。特に、こんなに移り変わりの烈しい世界では。そんな彼らには、生まれた国が違っても、地球全体のために世界中の人々と協力しようという志が培われていることを心から願います。

 

 

 

 

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