両輪となる言語
投稿日:2013年7月18日
先日、日本人の間で、おもしろい議論が起こりました。
「お疲れ様」という表現と、「ご苦労様」という表現がいつどのように使われるべきか、というものです。上下関係や状況をわきまえる必要ありということで、そういう複雑なニュアンスを汲み取らなければならないことの煩わしさが日本語の難しいところでもある一方、文化に根ざす奥深いところでもあります。
オーストラリアに留学してくる生徒たちの大きな目的のひとつは、英語の習得です。
ICETの言語学習の目指すところは、日本語と英語が両輪となることです。
英語はできるようになりました。でも、出てくる日本語があまりきれいな日本語でなければ、興ざめです。やはり、友達の間であっても、ある程度の丁寧さと品格を保つことは必要なことです。
高校生は、母語をまだ発達させている渦中にあるので、英語だけでなく、日本語の力を付けていくこともとても大事なことです。新しい語彙を毎日のように覚え、知識を付け、学術的にも、ふたつの言葉で表現できるようになっていくことで言語の幅を広げていきます。
CAPDの授業は、この面においても、とても大事な意味を持ちます。唯一の日本語での授業であり、日本語でいろいろなことを考え、自分の意見を構築し、表現できるようにしていきます。知識があれば、英語力が付くにつれ、それを英語で表現することが可能となります。でも、知識がなければ、先立つものは何もない、ということになります。だから、言語で何であれ、知識を取り入れることが優先です。
知識を入れる際には、もし、英語で10時間かかるものが日本語で30分で得られるのなら、、日本語で得ることに罪悪感を感じることなく得たらいいのです。でも、英語でしか資料の無いものは当然英語で、そして、英語のほうが知識を得やすいものならば、少し時間がかかっても英語で習得するほうが得策です。
今日は、久々にCAPDのレッスンがありました。今日からとりかかるテーマは、MDGs – Millennium Development Goals (国連のミレニアム開発目標です。2000年に決議されたので、ミレニアム。2015年までが一応の目標となっています。今日は、英語の資料から入りました。MDGの8つのターゲットのひとつのは、初等教育です。また、別のターゲットは、女性の人権擁護と男女差をなくすことです。先日ご紹介しましたMalalaのスピーチは、まさに、この2つのターゲットを突いているものです。
Malalaのスピーチを聞き、とてもよく聞き取れていることに感心しました。きっと、Global Issuesでのニュースを聴く練習やAcademic Listeningの授業が功を奏しているのでしょう。いろいろな資料を読みながら、それぞれのチームで、自分たちのターゲットのリサーチに入りました。
*****
このブログで、私は、よく’peer learning’ということについて述べます。これは、仲間同士あるいは先輩後輩の間で、いろいろな形で学びが起こることです。
今日、また、とてもすてきな場面に出遭いました。
12年生は、こちらでのトライアル(HSCの模擬試験)と日本の大学の受験の準備のふたつが重なるので、本当に大変です。ある生徒が、これからしなければならないことの膨大さに圧倒され、とても対処できないと思い始めた瞬間に、別の12年生が入ってきました。「面白そう。一緒にやってみたい」とまず関心を示し、そこから、いろいろな話が発展していきました。そして、受験のひとつの条件であるTOEICについても、特に、Readingと文法を一緒に練習しようということで、取り組み始めました。
意見交換したり、質問したり、解説したり、なぜそうなるという分析をしたり、約2時間余、熱心にやっていました。その要素を時々覗き見ながら、この生徒たちは、それぞれがすばらしい教師であり、すばらしい学習者であるのだと、改めて感心しました。
茫然自失だった生徒も、多いに元気とやる気を取り戻していました。すごいですね、若者たちの力は。