déjà-vu
投稿日:2013年8月30日
世界は、2002年に起こった状態とまたも同じ状態になっています。
911の同時多発テロの後、アメリカのブッシュ大統領とイギリスのブレア首相は、オーストラリアやフランス、スペインの同意を得て、2002年イラクを襲撃しました。大量殺人兵器を備えている、毒ガスを大量に持っているという理由で。
国連の安全保障理事会の調査団の一人は、そういうものはイラクには無いということを訴えていました。でも、アメリカの議会も軍隊も、そして、ブレア首相も一切それには耳を傾けず、襲撃ありの姿勢を貫き、襲撃するための理由を並べました。襲撃した後にそんなものは全くなかったことが判明。その結果、では、彼らはそのとんでもない間違いに対して戦犯として扱われたか? いえいえ、選挙で破れることだけが彼らが受けた罰(?)です。オバマ大統領に武力行使の決断をせよと迫っている人々の中には、ラムズフェルトというフッシュ政権の時に軍部で力を振るっていた人の顔も見えます。
イラクは、その後、国として機能せず、未だにインフラは崩壊したまま、至るところで爆破事件が続発。一般市民がどれだけの被害にあい、どれだけの人々が亡くなってしまったかは知る由もありません。何万というただの数にしかなく、その裏には、個々の人々のどれだけの苦悩や苦難があるかは、戦争を起こす人々には、まったく関心の無いことなのかもしれません。
シリアにイギリス、フランス、アメリカの軍隊が襲撃を起こすのは、もう時間の問題のように見えます。地中海のキプロス島のあのきれいな海に、アメリカの艦隊、ロシアの艦隊が集まり始めているなんて。たった一人、オバマ大統領が、決断を控えています。戦争を起こすことで利益を得る人々からのプレッシャーに彼が屈するのか、それとも、人間がこの地球上で共生するための策を生み出すことができるのか。イギリスのキャメロン首相の議会でのスピーチを聞いていますと、毒ガスを使用したことを断定、それがアサド政権が行ったものだということも断定し、本当の真実がわからないまま、そして、国連の調査結果も待たないまま、もう、襲撃するのが当たり前、今すぐ行動すべきだと、必死に説得を試みています。
それが一体その後の世界情勢にどういう結果をもたらすかが見えないのでしょうか。アメリカのイラク襲撃以来この10年に世界が学んだものは一体何だったのでしょうか。戦争は、本当に人々に関係なく、裏にある力によって数名の人々が決めていくことであることが、10年前にも明白にみえ、今もまた同じ過程をたどっています。世界で何億という人々が反対を唱えても、それは、ただの蚊の声に過ぎないのでしょう。
イギリスは、なぜ、その襲撃をそこまで急ぐのでしょう。今のパレスチナ問題も、背景にいたのは、イギリスです。イギリスが触れた国が世界にはほとんど無い先日の40の世界地図が思い起こされます。イギリスの利を得るためには、どんなことでも口実になるのでしょう。爆弾や武器や原爆を使うことは、法的違反にならない。でも、毒ガスは、戦争に対する違反になる。だから、放っておけない、と。毒ガスであろうと、爆弾であろうと、人を殺すのは同じこと。原爆や空爆は合法と許されても、毒ガスは許されない。その論理は、どこにあるのでしょう。
今日は、難民と亡命希望者の問題について、オーストラリアの赤十字に勤務して実際にオーストラリアにやってくる亡命者たちの問題の渦中で働いてみえる椎尾さんに学校に来ていただき、その背景を説明していただきます。12年生が日本の大学を受験する際に、特に国際問題に関係ある学部を受験する場合には、世界の流れをできるだけ捉えておくことは不可欠で、11年生から12年生にかけて、過去100年世界に起こっていること、その背景を勉強します。今回は、難民問題を自分の将来の国際問題のひとつの研究課題として捉えている生徒たちもおり、その歴史、実態を現場の人の視線から説明していただく試みです。国際関係を勉学する人に限らず、一旦世界に飛び出し、グローバルな世界に今生きている私たちには、そうした理解と知識を持って世界を見ることが極めて大事ですので、1年生も参加します。
オーストラリアは、亡命希望者が年間何千人と船で不法に訪れてくることがここ何年も国政問題となっています。そうした現実に現場で向き合っている方のお話は、生徒たちの中にしっかりと浸透することでしょう。
そんなことを踏まえて、昨日のCAPDのレッスンでは、世界のいたるところで民族同士の紛争によって祖国や住むところを失って難民となった人々の様子を勉強しました。難民を生み出す背景は、今、シリアやエジプトで起こっていることとまったく同じです。人間は、民族に関わらず、思想に関わらず、相も変わらず、こうした紛争を繰り返していくのでしょうか? 日本と、オーストラリアという平和なポケットの中にいることのありがたさを感じる一方で、世界に起こっていることに無関心でいることはできません。世界の動きは、すべて日本にも、私たちにも、そして、若者たちの未来にも、直接、間接につながっているからです。
PS
昨日の5年生との交流は、すばらしいできばえのものでした。その様子は、週末にかけてお伝えします。