「Utopia」
投稿日:2014年1月18日
昨夜は、Senior Studentsと「ユートピア」というドキュメンタリーを見に行ってきました。全員が揃わなかったことがは惜しかったです。
トーマス・モアの「ユートピア」でもなく、ボッシュの「エデンの楽園」でもなく、理想郷とは正反対の状態にある、皮肉にも「ユートピア」という名が付いたオーストラリアのど真ん中、エアーズロックのすぐ近くにある小さな村に住む先住民アボリジナルの人々の現状を映したドキュメンタリーです。
白人が1788年にこの地にやってくる前までは、この広い大地に広がり、土地が彼らの神様であり、自然界の中にスピリチュアルな世界を作っていた人々は、文字を持たなかったばかりに、そして、鉄砲を持たなかったばかりに、侵略と殺戮の結果、200年以上経った今も、オーストラリアの主流となった西洋文化と資本主義の社会に溶け込むことができず、社会の底辺で虐げられているアボリジナル文化と人々。
製作者は、John Pilgerというオーストアリアでよく知られたジャーナリストです。彼は、28年前にアボリジナルの生活状況を映したフィルムを制作し、その時と何も変わっていない、オーストラリアのように豊かな国で、世界で最もラッキーと言われる国に、どうしてこんなことが許されているのか、どうして、改善に政府が力を入れないのか、ということを訴えています。
昨夜の映画の上映は、Redfernというシドニーでも名だたる地区にある歴史的な場所でオープンエアの中で行われました。しかも、オーストラリアでの初演ということもあり、合宿に出る前日でもあり、夜遅くまでの外出は控えたかったのですが、極めて歴史的な意義のある、そして、象徴的な出来事だったので、みんなで出かけることにしました。
Redfernというのは、アボリジナルの人々がたくさん居住していることで有名で、「暴力」と「貧困」の代名詞ともなっているところです。一体、どのくらいの人々が集まったのでしょう。大きな広場が人で埋まっていました。
”Redfern, NOW”というテレビ番組があるのですが、その番組を観て、ESLの授業の中に、その内容を取り入れたコウキ君は、その場所が番組の撮影現場であることに気付き、より一層意義を感じたようです。
陽が落ち、風が強くなり、スピーカーの音が乱れ、夜も遅くなり、体力的にはみな少々大変だったのですが、でも、こんな人権侵害が許されていていいはずがない、国民みんなが立ち上がるべきだ、という力強いスピーチが映画の前に90分ほどあり、生徒たちには、今まであまり体験したことがない場面だったろうと思います。
この映画は、オーストラリアでスポンサーを獲得することができず、英国で得たということですが、ドキュメンタリーの中には、オーストラリアの政治家がアボリジナルに対して如何に無知であり、関心が無いかをさらけ出す結果となるようなインタビューもいくつか含まれていて、フィルムの制作中も取材のカメラを入れる許可が降りない箇所がいくつかあったようですが、施政者にとっては極めて居心地の悪いドキュメンタリーであることは確かです。
生徒たちは、これからオーストラリアの歴史を学んでいく中でアボリジナルの人々についても学んでいきますので、このブログでもまた、これに触れる機会がありましょう。