旅行の勉強会2
投稿日:2014年4月22日
“The railroad of Love”「愛の線路」には、こんな部分も出てきます。
例えば、日本の潜水艦が三隻シドニー湾に潜入した時のこと。このことは、以前、その夜にそれを自宅のバルコニーから目撃されたマーガレットさんのことをお話した時に、このブログでも触れましたが、オーストラリアの人々の精神をよく表しているのは、潜水艦の中に発見された日本兵の御霊を祀る葬儀を豪海軍が取り仕切り、日本に遺骨を返したということです。
敵国であっても、兵士は兵士。みな、国のために命を捧げる。その精神に国境はない、ということなのですね。
この精神に関しては、ビデオ観賞後の作文で触れている生徒が複数いました。自分だったら、自分や仲間を襲撃して殺した人に、それができただろうか、と問うている生徒もいました。
休暇中だったのですが、たまたまサイエンスの先生が学校にいらっしゃいました。Alan Ferris先生という大のICETプログラムの支援者です。ドキュメンタリーや生徒たちが勉強していること、キャンベラの旅の目的などに加えて、この潜水艦と海軍の葬儀についてお話ししますと、
「僕は、それがオーストラリア人の気質だと思うよ。おおらかで、小さな事にこだわらず、大同をとって、人間に何がいいか、人が何を喜ぶかを考える人が多いんだよね、この国は。」というコメントがありました。
文化の違いを論じ始めたら二人とも止まらないので、適当に切り上げてしまった(といっても半時間以上だった)のですが、でも、この精神が、英国で貧乏が故に食料などを盗んだために遠い大陸に島流しになり、そして、政府の高官とか、国の役人といった力と権威を押し付ける人々に反発を感じる人々によって現代社会が始まったこの国の文化背景によるものなのか、もっと話が続けられなかったのが残念でした。
トニー神父が日本とオーストラリアの親善復活のためにされたことは、いろいろあります。日本の文化を知ってもらうために、日本から船いっぱいの文化製品を運び、展示会を開催しようとします。ニュージーランドは、簡単に開催できました。オーストラリアは反対が多すぎて、当初は、開催の交渉がとても難しかったようです。
時のメンディス首相の力を借りて開催に。一方で、南方から帰還したオーストラリアの兵士が持ってきた日本兵の刀を返還してもらい、日本で展示会を開き、それを持ち主に返す運動も進めました。「刀は、日本の兵隊さんの魂であるから、持ち主のご家族に戻しましょう」と。
ある将校は、日本兵に脚を切られた体験があり、「絶対に刀は返さない。部下への裏切りでもある」と拒みます。でも、トニー神父は、「憎しみと恨みを次の代に残さないように、刀を返しましょう」と説得します。
遂にその将校は考えを変え、怒る奥さんに刀を磨きないと命じます。そして、奥さんも、「次第に、刀を磨けば磨くほど、心も怒りも浄められていった」とその心境を述べています。
日本には、戦後、連合軍の兵士と日本女性の間にたくさんの子どもたちが生まれました。孤児となった多くの子どもたちを救済しようとエリザベスサンダースホームを設立し、日本政府や連合軍から虐げられてもなおその子どもたちのために闘った澤田美樹さんの壮絶な生き方については、よく知られていますが、ほとんど知られていないのは、トニー神父の貢献です。
奈良を中心に彼は、父親がオーストラリア人の兵士である130人ほどの孤児を支援し、父親のいるオーストラリアに移民を試みました。
ところが、オーストラリアは白豪主義で、白人以外の人々の移民を認めません。その狭量さを恥ずかしいと思っていたジャーナリストがトニー神父と一緒に、国の政策を動かす事になります。
今のオーストラリアは、世界のどこの国からでも移民を受け入れています。生徒たちが、英語の授業で勉強しているのは、”White Australia”ではなく、Multiculturalism(多民族多文化政策)” です。トニー神父の考え方は、ここでも、オーストラリアの後の社会のあり方を大きく変えました。
愛と赦しを説く人の言葉は、ここまで社会を動かすのですね。それは、人間が、みな、愛と赦しを受け止め、与えるだけの心の広さや深さを持っているということです。でも、日常の、あるいは、紛争といった極限の中で、もっと別な感情に捕われてしまうために、悲劇が起こるのでしょう。
奈良で幼稚園の園長先生をされたトニー神父は、こんなことを言われています。
「子どもたちには幸せになって欲しいですね。幸せな子どもたちは、幸せな家庭から来ます。お父さん、お母さん、仲良く暮らしましょうね」
ビデオ観賞後、生徒たちは、ペアで調べてきたトピックを発表しました。
CSIROというオーストラリアだけでなく世界の先端を行く科学リサーチをしている機関について。
オーストラリアの議会政治について。
オーストラリアの造幣局について。
ANZAC Dayについて。
第一次大戦について。
第二次大戦について。
キャンベラの成り立ちについて、などなど。
そして、昨日の午後と今日は、きっと、食材の買い出しに出ていることでしょう。
予算に従って、それぞれのキャビンで何を作るかを決め、食材を得、4日間分の朝ご飯、ランチ、夕食を自分たちで用意します。条件は、健康的なものを作るということだけです。予算を超過すれば、自分のポケットが痛みます。他のグループと協力したり、上手に材料を使いこなせば、おいしいものがたっぷりと食べられます。
毎年、これは、生徒たちがとても喜ぶ企画です。さて、4日間、どんなコックぶりを発揮するのでしょう。
明日の朝は、7時に出発。今晩は、明日のいいお天気を思わせる茜色のすばらしい夕焼けです。