発想の転換
投稿日:2014年5月4日
発想の転換。
よく聞く言葉です。物事に行き詰まった時、あるいは、大きな改革的な変化を求める時など、発想の転換が求められます。
物事を違う方法でするためには、あるいは、新しい案を注入するためには、違う角度からの考え方、違う価値を持った考え方、違う方法が必要であり、それは、従来のものとはまったく違うところから発せられるものであることが必要です。
たとえば、外国に留学すると、それまで内側から見ていた日本を外から見て、今まで見えなかったところが見え、当たり前だと思っていたことがまったく違って見えてきます。これは、物事を考える際に、発想の転換を促す大きな要素となります。
大きな挫折や深い苦悩を克服すると、多くの人々は、以前とは違った考え方、感じ方をするようになります。これも、発送の転換に結びつきます。なぜならば、基軸となる価値観が前と後とはまったく異なるからです。
大きな失敗が後の成功につながるのは、ここでも、考え方の方向転換、基軸となるものの大きなシフトが起こるからです。
新しい発想は、新しい世界、新しい方向をもたらします。
先週、大変びっくりとすることが起こりました。まさに、発想の転換に値するものです。
キャンベラの旅行後、生徒たちは、食材に使ったお金の領収書を提出することになっています。
キャンベラ滞在中に自分たちが予算内で自分たちで食材を求め、お料理をする背景には、いろいろな理由があります。
* グループ内での、あるいは、グループとグループでのコミュニケーションと協力を強化する
* 上手に実践するためには、計画を要する
* お金の効率的な使い方と管理を学ぶ
* 好きなものを作って食べる
* 料理することを楽しむ、等々
コツは、グループ間で協力すればするほど、お金は有効に使えます。
条件は、
* グループは、予算として与えられた額で計画を立てる
* 越えた分は自分のお小遣いで補充する
* 領収書が提出できないものについては返還する
* 健康的なものを購入すること
こういう条件ですので、生徒たちの考えの基軸は、予算をどれだけ上手に使うかということに置かれます。中には、超過してしまったというグループもありますが、ほとんどのグループは、1ドル以下の差額で抑えてきます。
ところが、まったく違う基軸を使ったグループが出てきました。
なんと、予算の4分の一で納め、「これだけで、成功しました」と喜び勇んで報告してきたのです。彼女たちの基軸は、
* 健康的な食事をする
* 好きなものを楽しむ
ということにあり、お金をどう使うかではなく、そのふたつに沿って実行したら、お金は、これだけしか必要ではなかった、ということなのです。
食材に予算全部を費やさない場合でも、他のグループが全額使うのなら、自分たちも使わなければ損という考え方をする場合には、お菓子だろうがスナックだろうがソフトドリンクだろうが、「健康的な」という条件は無視しても、使うことに視点が置かれます。食べられる以上の物を購入することもあります。
このグループの考え方、実践方法に、私は、痛く感動しました。返還されたお金は、また別の、みんなで出る野外研修の費用の足しとなります。
そこには、工夫もありました。休暇中に家族でキャンプに出かけ、残った食料があるので、それを持っていってもいいよ、というホストからの差し入れがあったり、キャンベラでのショッピングの際に、普段ホストと買い物をしていて、ALDIというドイツ系のスーパーが他のスーパーマーケットよりもより安価な値段で売っていることを知っていて、そこでショッピングをしたり、とか。
消費文化真っ只中に、こういう考え方をする高校生がいる。これは、本当に特別なことだということを全員にわかって欲しい、そして、このグループの生徒たちには、当たり前にしたことが実は当たり前ではなく、とても特別なことなのだ、ということを。
どうすればいいのか、考えました。
そう、ディレクター賞という特別な賞をあげよう、と。
今まで、ディレクター賞なんて出したことがありません。でも、それだけ、このグループのしたことは、特別なことです。
4人の生徒たちが望むご褒美は、水族館に行きたい、そして、私のお弁当でピクニックをしたい、ということでした。
日本のお母様がたが作られるお弁当には到底及びませんが、でも、心をこめて作りましょう。彼女たちの心意気に感謝し、敬意を表して。