菅元首相の演説

投稿日:2014年9月3日

先日、偶然に、大変興味深い報道を見ました。

菅直人元首相が8月26日にキャンベラのAustralian National Universityでスピーチされたフィルムです。

ANUは、ICETの卒業生が日本の大学から再び留学してきた大学。生徒たちが毎年キャンベラに旅行に行く際に、宿舎に行く途中で通るところ。なんとなく親近感のあるところです。

スピーチは、菅氏が日本語で。そして、通訳が英語で、という日英両方の言葉で行われました。

菅氏を紹介する導入で、福島で起きた事故にオーストラリアが輸出しているウラニウムが使われていることを遺憾に思うというオーストラリア側の「お詫び」があり、それに続く説明の中で菅氏の経歴や活動に敬意が評されていることが伝わってきました。日本での報道姿勢とはかけ離れて違うものでした。

取ったメモは4ページにのぼりますので、原子炉のことや事故当日、そして、その後の経過についての詳細には触れず、2点、印象に残ったことを記します。

9月1日にこのグログでオーストラリアの先住民のアボリジニーの人々の歴史に触れる世界銀行の國井氏の記事をご紹介しましたが、アボリジニーの人々は、何万年もの間土地と一体となって暮らしてきた人々です。その土地が、広大な森が農場のために伐採され土地は酸性化し、鉱山として掘り起こされ、ガス採取のために農場が破壊され、環境がどんどんと壊されていっていることに深く心を痛めています。

そこから出たウランが日本の人々の命や生活を脅かしていることにも心を痛め、日本に訪問したことがある方が、「山や川など全てに神が宿るという日本の神道の教えはアボリジニと共通だ」と菅氏に言われたそうです。

 日本の現状にこんなふうな形で遠くから祈りを捧げてくださっている方々があるのですね。

スピーチの最後に、菅氏は、こんなことを言われていました。

 「ノルウェーの、地下500メートルに埋められた原発のゴミ、放射能廃棄物が置かれたオンカロを訪問し、10万年後まで放射能は消えないということを聞き、人間は、こんな無責任なことを後の世代に残していっていいのだろうかと思った。自然災害は、人間がコントロールできるものではない。でも、原発は、人間がコントロールできるものである」と。

 福島での事故。その後に起こっていることは、政治家であろうと、専門家であろうと、学者であろうと、人間が、それを問題なく後片付けできる知識も能力も財力も知恵も持ち合わせていないことを証明し続けています。汚染されたゴミを捨てる場所さえありません。

人間は、たまたま生まれた時代が生きる時代となります。どの国に、どの立場で生まれるかで、運命は大きく違います。

世界中に溢れる難民、戦争や紛争で家族や家を失う人々、飢餓や極貧の中で死んでいく人々、増える一方の世界の軍事費、富や食料の不均衡な分配など、様々に人間の生命を脅かすことが起こっている中で、日本は、比較的安定した生活を送ることが可能な国のひとつです。それは、平和だからです。

自然災害は絶え間なく起こります。これは、太古の昔から繰り返されてきたものです。築いた財や建物が大きくなればなるほど、多くなればなるほど、被害も大きくなります。しかしながら、自然災害は、時が経てばあきらめがつきます。自然という抗うことができない偉大な力を相手にするものだから。

でも、人が選択したことの犠牲になった場合には、あきらめはつきません。憤りが積み上がるだけです。その憤りを持っていく場所もなく、「幸せ」になることを放棄せざると得なくなります。

物質による富が価値の軸になってからは、倫理も思いやりも共感も健康も後回しの価値となってしまいました。経済発展の名の元に、原発の再稼働をなんとか実現しようとし、地滑りが起こるとわかっている土地に住宅を建設し、病気にさせることをわかっている合成添加物で食品を汚染し、エネルギーを得るために自然を破壊していきます。

一方、それをよしとするか、あるいは、流れに身を任せる姿勢を多くの人々が身に付けてしまったことも確かです。

どこに向かって歩んで行くのか、何を軸にして毎日を送るのか、何を選択するのか、の「意識」を私たちの日常に取り入れることは火急の課題です。

個人や家族の幸せのためにも、地球の未来のためにも。

長くなりましたが、最後に、魂が揺さぶられるような曲をご紹介します。

今日、11年生のCAPDの時間では、イギリスやフランス、スペインの植民地になった西インド諸島で起こったことを学びました。巨大な富を生み出す砂糖産業。今に至るまでの3世紀以上に渡る政治への影響。その労働をするために奴隷としてアフリカから連れてこられた人々。その悲惨な運命。

その奴隷船の中で聞かれたメロディーから生まれた”Amazing Grace”.  最初はトークですが、アフリカの音楽が黒鍵の音でできていることなど、おもしろい内容です。そして、奴隷として祖国を連れ去られ、狭い船底に閉じ込められた黒人の人々の苦しみを伝えるAmazing Grace.

https://www.youtube.com/watch?v=qNuQbJst4Lk

 

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