Peer Learning
投稿日:2011年3月21日
リビアに軍事介入が決まったという報道があった日。
イラクのようなことになる始まりなのか、それとも、あっという間に終わることなのか。イギリスのキャメロン首相の声明の中に、「ここから先にどのような結果が続いてくるかはわからない。でも、何もしない結果よりも、何かして続く結果のほうがいい」という文言がありました。
彼が使った3つの言葉がありました。「必要」「法的に正当」「正しい」というものです。「必要」は、施政者に襲われている国民を放って置けない。「正当」は、国連の決議の裏づけがある。「正しい」は、施政者のしていることが間違っている以上、襲撃される市民を助けることは正しい。
理は適っているように聞こえます。でも、本当にそうなのか・・・ 西欧のデモクラシーの価値観に基づく正義が、本当にすべてに「正しいもの」として適応されるのかどうか、これが、唯一のリビアの状況の解決方法なのだろうか、と自分の中で悶々としています。
このブログには、政治的なことはできるだけ触れないようにしているのですが、このことは、避けて通れないように感じました。
さて、その日、シドニーでの私たちの生活は、いつものように流れています。20日(日)には、数名の生徒たちが学校に集まりました。勉強会を開いているのです。
こちらではPeer Leaningという言葉がよく使われます。Peerというのは仲間という意味です。生徒どうし、仲間どうしが教えあうことを意味しています。生徒たちが自主的に自分たちの中で教えあうことは、最も効果のある勉学方法だと言われています。
教えるということは、正確な知識を持たなければできません。相手に理解させるということは、高度なコミュニケーション技術が要求されます。教わる側がメリットを得るだけでなく、教える側のメリットもとても大きなものです。
カナダのMount Douglas Secondary Schoolでは、このpeer learningを積極的に取り入れ、大きな成功を修めています。それが、学校の教育システムの中に組み込まれ、生徒に単位が認証されています。
どういう形にしたら、生徒の貢献を公式に認めることができるのかいろいろ思案しても、なかなかいい方法が思いつきません。しかしながら、このpeer learningは、ICETの伝統として浸透しています。特に、3年目の生徒たちは、自分たちでいろいろ教えあい、互いを高め、互いに成長する精神をしっかりと培っています。それは、2002年の一期生が確立したものが、生徒の中で受け継がれているのでしょう。
今年の12年生も、いろいろな形で、自分たちのみならず、後輩の生徒たちにも支援を送り、互いの学習や留学生活の質を高めあっています。先生たちの目が届かないところで、細かいアドバイスや誘導があることは、本当にありがたいことであり、すばらしいことです。
普段の学校生活、ホストでの生活、留学という外国での生活に関して、先輩が提供するアドバイスは、実際の体験に基づくものであり、大人から出される、「こうしたらいい」「こうあるべき」という類のものとは違います。アドバイスは、選択授業や英語の学習についても、日常生活についても、たくさん提供されています。
そうしたpeer learningの中で、活躍が一際目立つのが、コウメイ君の貢献です。今日は、28日から始まる12年生の前期考査を控えてクラスメートの数学の問題解決技術を強化するための学習会。延々8時間。クリスマスの休暇には、後輩のためにと、2000語の英語の語彙を抜き出した冊子を作り、1月の到着早々に全員に手渡し、定期的に学習を確認できる方法を考えています。去年は、日本語を学習したいデイビッドソンの生徒たちに昼休みに日本語教室を開設し継続する努力をしたりと、様々なpeer learningの場を積極的に設けています。
彼自身が、それを自分の学びの場と捉えていることに感動を覚えると同時に、知識と時間を誰に対しても惜しみなく分け与える姿勢に敬意を表します。
今日は、電車やバスを乗り継いできたMLCの2名の小論文の練習もありました。MLC に通学する生徒たちには、大学受験に向けた準備の時間が定期的にはないので、1ヶ月に1度か2度、日曜日を利用してDHSに集まります。
小論文、エッセイは、自分の考えをどうまとめ、どう表現するか、というものなので、論理的な思考、材料の豊かさ、構成の技術、軸となる視点、反映される価値観など、英語、日本語、どちらにも共通した能力が求められます。それぞれの言語における発達が、相乗効果を持っていることがよく見えます。
徐々に、エッセイの書き方が上手になってきていることが感じられると、それまで苦痛だったものが、楽しみともなってきます。そんな喜びが表情に出てきているのが観られることは、とても嬉しいことです。
技術が向上してきている過程には、JBSの授業が大きく貢献しています。JBSでは、問題に正確に答えるためにはどうすればいいかを徹底して練習し、漢字や四字熟語なども常に練習を重ねています。その基礎があり、留学中の養われる様々な視点があり、そして、なによりも自分で考える、ということを繰り返してきた結果として、自由に展開できる小論文の中身が豊かなものとなってきます。
向上心に燃え、スポーツに、勉学に、一生懸命に励む若者たちが、とても頼もしく見えます。