URA フォーラム
投稿日:2010年7月4日
MLC校では6月26日から一足先に、そして、デイビッドソン校では今日から18日まで冬休みです。忙しい2学期でした。この時期は、疲れが出て風邪を引く生徒も多くなります。幸いにも、ICETの生徒たちは、ほぼ全員が元気で2学期を乗り越えました。まずは、ゆっくりと休み、体力の回復を図ってからそれぞれの計画に臨むことが大事です。
10年生は、ホストファミリーとの、そして、お友だちとの楽しいプロジェクトがたくさんあります。例えばホストと一緒のメニュー作りや博物館の見学。シドニーブリッジの上を歩くなど、生徒たちがしたいとあげた項目が18にも上ります。全員が取り組むもの、希望者がするもの、とありますが、生徒たちのやる気が大いに感じられます。
11年生は、普段時間がなくでできないことを楽しみ、同時に、前半期の復習にあてる休暇です。12年生は、休暇明けにあるHSC模擬試験に向けて、そして、日本の大学の受験に向けての小論文や面接の練習に休みの大半が使われます。12年生には、休暇という言葉は関係なさそうです。ご苦労様。
ということで、休暇の中身はそれぞれの学年によって異なります。
6月29日、2010年のURAフォーラムが成功裏に終わりました。集まった54名の生徒の国籍と文化背景は、20カ国を超えました。URAというのは、Understanding(理解)、Respect (尊重)、Acceptance (寛容)の頭文字をとり、多くの民族が住むこの地球上で上手に共存していくためには、違いを認め、相互理解と尊重が欠かせないことを意味する名前です。
急速に変り行くグローバル社会において、現在の高校生の未来はどんな世界になるのか、今の高校生はどんな未来社会を作りたいと願っているのかという観点から、「若者が理想とする社会」というテーマで発表と議論が行われました。トピックは、5つです。
「マス・メディア」メディアの持つ利点や便宜性と同時に、それが若者の生活習慣や心理に与える複雑な影響についてDavidsonの11年生の生徒が発表。
「多文化社会」学校内に70近い国籍の違う生徒を包容するBlacktown Girls High Schoolの生徒たちが、その多様性のすばらしさ、そして、すばらしさを生むために必要とされることなどを発表。
「キャリア」現在だからこそ考えられる国境の無い多種多様の仕事。どんな才能・技術が要求されるのか。Model Farms High Schoolの生徒たちが発表。
「教育」未来社会に上手に適合してくためにはどんな教育が必要なのか。教育によって形成される個人と社会、教育は未来をどう作っていくのか。Davidson High SchoolのInternational Students (ICETの2年目の生徒たち)による発表。
「家庭」国際結婚、女性の社会進出の是非、留学という形の教育の効果などについてICETの10年生が発表。
発表には、データやアンケートの結果などたくさんの情報が盛り込まれ、それを基に、各テーブルでたくさんの意見や問題に対する解決策などが話し合われました。1年目の生徒たちは、思うように議論には入れない部分はあっても、テーブル毎のまとめを発表する勇気を持った生徒たちが何人もいたことは新鮮な感動を呼ぶものでした。11年生、12年生は、言葉がわかるだけに、フォーラムの楽しさを満喫したようです。
フォーラムの会長、総合司会は、ICETの3年目、12年生の生徒たちです。彼らの指揮に従って、全員が、それぞれの箇所において役目を果たし、見事な活躍を見せました。
URAフォーラムが創設されたのは2006年です。すべてのことを自分たちで仕切り、自分たちのフォーラムとして誇りを持って実施している生徒たちを見るのは感慨深いものです。
留学生は、その地での文化と言語を学ぶことに忙しく、なかなかリーダーシップを執る機会がありません。言葉がまだ不自由であれば、動くことができないし、人を動かすことも上手にできないからです。しかしながら、日本からICETに留学してくる生徒たちは、冒険心があり、志があり、すばらしい資質を備えている生徒がたくさんいます。将来、日本だけでなく、世界でリーダーシップを執っていかなければならない時代に生きている世代であり、その練習を踏むためにここに留学に来ているわけですので、そうした場が必要です。ICETの生徒たちが現地の学校の生徒会やリーダーたちのグループに入れる枠を学校に設けてもらったのは、そのひとつの方法です。しかし、そこでもリーダーシップを執ることは限られます。
URAフォーラムは、ICETの生徒たちが100%のリーダーシップを執る場です。企画、運営のすべてをICETの生徒たちが2ヶ月かけて組織していきます。会長は、大変な役目を背負うわけですが、それだけにやりがいのある仕事でもあります。委員会に属する生徒たちは、無から有を作り上げていく、それも、多国籍から成る人々をとり込んで行くことは、極めて貴重な体験となるのみならず、将来国際的な場で役に立つ実践力と技を身につけていきます。3年間の体験を積んでいくことで、3年目には、本当に自分のものとして実行することができるようになります。
フォーラムを設置したのは、ほかにも理由があります。日本の大学受験との関連です。ボランティア活動への参加が日本の高校において義務化され、当然のことながら大学では、高校での活動に視点が行きます。留学生は学校の学習が忙しいだけでなく、日本のような公共の交通の便が存在しないシドニーでは、移動はすべてホストファミリーに依存することになります。活動への参加をとても難しくしている一因がここにあります。もうひとつは、高校生のボランティア活動への参加そのものが難しいということです。オーストラリアは、地域活動にボランティアで参加する人たちが無限にいます。その中には、専門的な知識を持った人たちがたくさんいます。そこに、言葉が通じないかもしれない、訓練を受けていない、専任の監督がいるわけではないので事故があった場合の責任の問題がある、様子がのみこめていない高校生が参入できる余地はほとんどありません。そうなると、留学生には、ボランティア活動という欄には書くことが非常に少なくなります。フォーラムのように、留学生だからできる国際的な内容での活動への参加は、望ましい条件のものとなります。フォーラムは、Enrichment Programをはじめ現地校の催しで日本の高校生が活動できるものに加えて、追加できる大きな価値のあるものです。
もうひとつの理由は、いろいろ異なる文化的背景を持つ同年代の人々との交流です。選定されたトピックに沿って価値観や見解や解決策を議論することは、新しい情報を得るだけでなく、目からうろこが落ちるような新しい発見もたくさんあります。これも、まさに留学中だからできることです。
以上のような理由から、URA Forumは、ICETにとって、そして、ICETで学習する留学生にとって重要な学習の場であり、将来のリーダー養成の場でもあります。丸1日参観されたModel Farms HSの校長先生が、「若者たちがこんなふうに文化を超えてディスカッションできる場があることはすばらしい。メディアは、今の若者たちのことを悪く書きすぎる向きがある。みんなこんなに真剣に自分たちの、そして、地球の未来を考えているんだ。今日、参加してよかった。こんな機会をありがとう」とコメントされました。ギャビン先生は、生徒たちの発表の内容のレベルの高さを賞賛されていました。