新入生オリエンテーション

投稿日:2011年4月7日

 岡山学芸館高等学校英語科の新1年生のオリエンテーションが4日にありました。

 初めてクラス全員が揃う日。となれば、このオリエンテーションは、次の3年間の姿勢の軸を作る大事なものです。担当を任された私の責任も大きなものとなります。

 今、日本は、そして、世界は、本当に大きな危機に直面しています。日本は、想像を絶する困難に見舞われています。同時に、自然の災害に、そして、紛争や戦争などの人災に同じ苦しみを味わっている人々が世界にたくさんいます。

 生きている中で、誰もが必ず自問すること、それは、何のために自分が存在するのか、ということです。

  私は、人間は、なんらかの役目を背負って、この世に送られてきていると信じています。生きている間に、できること、することがある、それが、生きている目的であり、それをすることで意味のある人生を送ることができる、と。

 この国難に際した時期に、留学という特殊な過程を持つ高校をあえて選択してきた生徒には、日本を世界とつなぐ、そして、世界を日本に今以上につなぐ役割と責任が必然的に課されるようになると思います。

 ここに集う若者たちは、命があり、未来に向けて希望の灯を掲げることができます。そのことを感謝し、今、日本で、そして、世界で、命の灯も希望の灯も失ってしまった人々に黙とうを捧げ、その人たちのためにも、一丸となって、これからの勉学に励んでいくことを誓う儀式でオリエンテーションを始めました。

 主体となる課題は、文化や価値観の違いをどう受け止め、どう対処するか、そして、自立していく過程において、自分をよりよく理解し、自己の成長を高めていく姿勢を作ることです。

 自国の中にいて、ひとつのクラスの中にいる生徒たちが、互いに尊重する姿勢を持てないのであれば、他の国の人々と共存しようなど、絵に描いた餅でしかありません。そのことを第一日目から実践することが目的のひとつでした。

 最初に、留学から戻った3年生たちが、全く文化の違うα国とβ国の人々が対面した時に、何がどう起こるか、それに対する互いの反応はどんなものだろうか、という内容のアクティビティを用意していました。内容は、JICA(国際協力機構)の人々が紹介してくれたものだということですが、オリエンテーションの最初として組み込まれていたのは、とても適宜だったと感じました。

 私は、留学から戻った生徒たちに会うことはありますが、彼らが1年生と接する場面に遭遇したことが今まで一度もありません。彼らに会う際には、いつもひとつの流れの中であって、彼らの1年前の姿を想像したとしても、彼らの成長を客観的に測ることはできません。

 今回は、留学をまだ体験していない若者たちのグループが存在したことにより、そのふたつのグループの差異が鮮明に目の前に出てきました。

 担当していた生徒たちは予定より早い時間に着き、キビキビと動き、テキパキと下級生に指示をだしている様は、さすがに、よその国で1年間鍛えられてきただけあると思わせるものでした。

 その後は、10時から5時まで、私と卒業生の宮島香苗さんとで担当しました。

 宮島さんは、ちょうど10年前のこの日、学芸館に入学し、留学し、筑波大学から多国籍企業のオラクルに入社し、現在、オーストラリアの教育界に導入されているITシステムを日本の学校に導入する仕事に関わっています。10年後の立場から、これから歩み始める生徒たちに語れることがたくさんありました。

 私がオリエンテーションで生徒たちの理解を目指したのは、次のようなことです。

・  人はみな違う。同じであろうと思わなくていい。違いが宝。違いを大事にしよう。でも、みんなつながっている。人はみな、人の支えを互いに必要とする。

・  表現して判断されることを怖れなくていい。なぜなら、みな、違うから。

・  違いを大事にするために自分を表現し、人の表現を受け入れるためにも自分を理解する。

・  自分を大事にすることで、人を大事にすることができる。

・  自分の持つ価値観を理解することで、人の価値観を尊重することができる。

・  自分には、自分でもよくわからない無意識の世界があり、徐々に理解を広げていくことで、自分のさらなる成長を促すことができる。

・  自分の行動や言動や願望を駆るものは何なのだろう。それを理解することで、自分への理解が深まる。

・  良い学習者になるために、そして、効率の良い学習をするには、どうしたらいいのか。

・  できるだけ生きやすい人生を生きるためには、どんな資質を自分に備えていったらいいのか。

 そのために、自分のパーソナリティ、性格、価値観、他の人々との混じり方、コミュニケーションの仕方、リーダーシップの執り方などを探るアクティビティをしました。

 あれ、何だ、国際的なことには、ひとつも触れていないではないか、と思われるかもしれません。実は、国際的な理解が得られるかどうか、国際的な尊敬を得られるかどうかは、すべて個人から始まり、個人に起因するのです。国際関係という術ではないのです。その人が誰か、ということなのです。

 自分に尊厳が持てる生徒は、社会が自然に敬意を表します。日本の社会で敬意を表される生徒は、外国に出ても敬意を表されます。

 本来なら、何日間かかけてする内容を1日に盛り込んだので、生徒たちにとっては、たいへんな1日だったことでしょう。目を白黒させていたように見えました。でも、生徒たちの感想から、まじめに真剣に、そして、関心を持って取り組んでいたことが窺われ、1日よくがんばったことに感心しました。

 3Lの5名がお手伝いに残ってくれました。各グループのディスカッションで堂々と意見を述べ、新入生が意見を言えるように上手にリードしていく様は、感動するものでした。

 お手伝い、ありがとう!! すばらしい先輩であることを嬉しく思います。

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