陽はまた昇る

投稿日:2011年4月14日

 オーストラリアにおける日本についてのニュースは、この10日間に激減しました。

 クライスト・チャーチがもうニュースにならないように、日本のことも、これからはオーストラリアでは、あまり、ニュースにはならないのかもしれません。原発の危険度がレベル7になったということも、さりげなく、すっと述べられただけでした。

 報道にはなくても、失った家族、失った家や思い出の品々、トラウマとのたたかい、続く余震の恐怖、大きく影を落とす福島原発の不安、避難地での厳しい生活、被災地での復興への努力は日々続いていきます。何ヶ月も、そして、何年も・・・

東に昇る太陽

 でも、陽はまた昇ります。どんなところにも、希望を捨てない限り。 

 失ったものが大きいだけに、立て直すものも大きく、それをどんなものにするかがこれからの課題です。

 日本は、今、これでもか、これでもか、というほどに自然の力に叩きのめされています。でも、それは、日本だけではありません。世界中が、自然の脅威に晒され、その猛威に怖れをなしています。あまりにもその破壊力がすごいために、よく話しに出てくるのが、マヤの暦が示す、2012年12月21日の終焉です。終焉といっても、この世のすべてのことが終わってしまうというのではなく、現在われわれが知る物質に囲まれた世界とはまったく違う「意識の世界」が始まるというものです。

 私は、大学卒業後2年間日本航空に勤務し、その後、4年半メキシコの大学でマヤ文明やアステカ文明のことを勉強したのですが、残念ながら、その当時、マヤの暦の内容を詳しく学ぶまでには至りませんでした。でも、「マヤ」と聞くだけで、心はぐっと惹きつけられます。

 本屋に行けば、「終焉」関係の本が、ずらっと並んでいます。その中で突出して有名なのが、マヤや世界のスピリチュアリティを研究しているCarl Johan Calleman(カラマン)というスエーデンの物理生物学者や、マヤやチェロキーの儀式を記録し続けているBarbara Hand Clow(クロー)という女性です。彼らによると、マヤの世界が第9波の段階に至り、そこからは、女性の姿をした神様のもとに、人間が意識でつながる世界が始まるといいます。

 あたかも、観音様の慈悲の心のもとにすべての人間の心がつながるような感じです。

 今、日本は、すべての人々が、耐え難きを堪え、自分の利を捨て、利便さを返上し、みんなで一緒に助け合おうという姿勢を見せています。それが、国際的な感動を呼び起こしています。もしかしたら、これが、その意識でつながる新しい世界の始まりで、私たちは、その世界の始まりを垣間見ているのではないかというような気がします。

 世界は、いろいろな意味で荒れています。人間の価値が物で測られるようになり、数字のみが意味を持つようになり、ほんのわずかな人々のみが世界の豊かさをむさぼり、強い国が弱い国を搾取し上手に騙し、何億という人間が食べるものもろくに得られず、国が豊かになればなるほど住民の心が空虚で貧しくなっていく中で、日本の悲劇は、それをくつがえし、人間にとって本当に大事なものは何かということを示すものなのかもしれません。

 日本は、戦後の復興を遂げ、世界第二の経済大国になってから、社会の中にいろいろな歪が見えるようになってきました。ひきこもっている若者が100万を超える、学校に行かない中学生が13万にもいる、自殺をする人がもう十年以上も毎年3万人もいる、うつ病になる人の数はうなぎのぼり、子供が親を殺したり親が子供を虐待するのはもう珍しくもないこと、政界や法曹界強いては警察や学校まで人を騙し欺くことが平気で行われ、検察庁の存在が揺らぎ、学校や会社ではいじめが横行、給食費の支払いを拒み「いただきます」を言わせない親、1日じゅう携帯やiPodなどの機器から離れられない子供たち、世界の漁獲量の10%を食べてしまう日本人・・・ 

 そんな奇妙な社会だったのに、「日本人はすごい人たちだ。世界のお手本になる行儀よさと規律と強靭な精神と互いを思う心を持っている」と世界が讃え、賞賛し、感動しています。底流に流れるものが表に出たのでしょう。

 日本には、「腹が据わっている」「腹が太い」「腹を固める」「腹を括る」など、「腹」を使った言葉があります。何か、「心」で決心するよりも、「腹」でする決断、決意には、もっとずっと重く力強いエネルギーがあるように感じます。それは、腹が、元気の源であり、目標を定め、火を燃やすものが、そこにあるからでしょう。今、日本人は、腹を括っているのだと思います。がんばるしかない、やるしかない、やるぞ、と。

 失う前の日本の社会には、元気がありませんでした。これから、築き上げる社会には、力強い元気を吹き込んでいきたいですね。

 そんなことを考えている時に、自然は、それに応えてくれたように感じることがありました。 

 早朝、出かけることがあり、ちょうど、東から昇ってくる太陽が目に飛び込んできました。そうだ、これだ、陽はまた昇るんだ、闇から光の世界に回復するのだ、と思わせる太陽でした。すばらしくきれいだったので、写真に撮ろうと戻ってきたときには、雲がかかり、最初の印象とは違うものになったのですが、でも、太陽は、その輝きを惜しみなく放っていました。

 時を同じくして、黄色いトサカのあるボタンインコの訪問がありました。20匹が大群で押し寄せてきました。

 インコは、群れで行動する鳥で、彼らの「社会」を形成しているということです。つがいになったら、死ぬまで寄り添い、100歳までも生きるそうです。黄色いトサカのあるこの白いインコは、オーストラリアでは、イルミネーションの象徴として知られています。人々の心が闇に閉ざされた時、そして、長い闇のトンネルで出口が見えない時、そこに光明をもたらし、心の安定を取り戻すことを象徴している鳥だといわれています。

 彼らは、「東の門」の門番なのです。日本は、一番東にある国です。

 日本は、この悲劇を乗り越え、世界に光明を与える国として立ち上がることでしょう。でも、今度は、経済力ではなく、人間の価値、力、知恵を与える国として。

 

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