ちょっと大人の週末

投稿日:2011年6月21日

 オーストラリアには、この国の元首が誰であるかを思い出す日があります。

 英国のエリザベス女王IIの実際の誕生日は4月21日ですが、英国連邦の国々では、独自に誕生日の祝日を定めているようです。オーストラリアは、6月の2週目の月曜日。従って、その週末は3連休となります。1788年の最初の艦隊が到着した年から、英国国王(女王)の誕生日が祝われているということです。

 今年は、6月13日でした。日本でも春と秋に紫綬褒章や黄綬褒章の授与があるように、オーストラリアでも、この日には、いろいろな分野で活躍している人々にクイーンの名で授与があります。

 すでに10日も前のことになってしまいましたが、その週末を利用してキャンベラに行ってきました。これは、去年からの約束を果たすためです。

 ICETのプログラムには、3年プログラムというのがあります。10年余前に、1年プログラムを終えた生徒の中から、オーストラリアで引き続き学習し、こちらで卒業したいという生徒が出てくるようになりました。それまでも残りたいという希望はあっても、残れないという意識が生徒にも、私たちにもあり、1年で帰国ということが当たり前の時代だった頃です。

 何のサポートも無いところでは、1年そこそこのこちらでの英語学習で、現地の生徒たちと同等に学習し、一定の成果を修めて卒業することは自力では極めて難しいことであることを目撃し、そういう生徒たちのためのサポート体制を確立する必要性を強く感じました。その結果として生まれたのが、3年プログラムです。

 カリキュラムの上でも、精神面の上でも、そして、学習面の上でも、生徒たちが卒業試験に向けて2年間を乗り切ることができるように、そして、学習内容が将来のしっかりとした礎になるよう考えられたものです。

 ICETの1年プログラムの卒業後、追加の2年を現地の学校で学習する生徒は、2年目の最後にHSCという卒業統一試験を現地の学生を一緒に受験します。この試験は、高等教育を無事に完了したことを証明するものであり、そして、進学する生徒には、どの大学のどの学部に入学できるかを決定する基準となるものです。現地での競争は激しく、本気で勉強する生徒たちは、1日5-6時間の学習は当たり前という世界です。

 日本の大学に進学する生徒は、日本の大学受験と、このHSCと、ダブルの挑戦に臨むのです。どちらのひとつでも大変なのに、その両方を違う二言語でこなすことは、本当に大変なことです。

 「たいした勉強もせずに簡単にいい大学に入るのは、帰国子女の枠があるからだ」と日本で思ってみえる方々があることを先日知り、そして、教育に携わってみえる方々ですらそういう考えを持ってみえるのだということを知り、私は、大きな衝撃を受け、愕然としました。

 どこから、そんな発想、そんな誤解が生まれるのか。この子たちが、毎日、こんなに一生懸命勉強に取り組み、必死の思いで学習しているのに、日本では、そんなふうにしか受け止められていないということは、驚き以外の何物でもなく、また、そんな誤解があることをとても残念に思うと同時に、解くためのコミュニケーションをもっと図る必要があることを強く感じました。

 11年生になると、生徒たちは、前年度との違いを痛感することになります。1年プログラムは、体験を楽しみ、異文化での実体験を通して言語や習慣を学び、そして、社会や世界への視野を広げ、自分自身を大きく成長させることが軸となっています。

 11年生になると同時に、お膳立てされた「楽しい、楽しい」の体験の場は激減どころか、ほぼゼロに近くなり、2年後の卒業に向けて自らが取り組まなくてはならない本格的な学習の場に切り替わるからです。

 その切り替えには、少し時間がかかります。与えられることを最上の方法でこなすことが良い生徒だというメンタリティから、学習も未来も自らが切り拓かなければ何事も起らないというメンタリティに替えることは、簡単ではありません。そして、それが実際の行動に見えなければ、前には進むことができません。

 1年生の間にも、当然、その訓練は受けるのですが、1年生の間は、まだ、日本社会から持ち込んだ習慣から抜け出ることはなかなかできません。因みに、このメンタリティから抜け出てオーストラリアの新しい学習方法に1日でも早く馴染む生徒は、本当に留学生活を満喫し、そして、学習成果も大きなものとなります。逆に、このメンタリティを脱却できないと、「日本と違う」「日本のほうがわかりやすい」と「日本」にしがみつくことになり、英語の進歩も遅々としたものになりかねません。

 2年目には、再びさらに新しい世界に放り込まれる格好になるのですが、自分で泳がなければならないだけに、その成長も当然大きなものとなります。

 2年目は、ICETの傘下にあり、学習面での補助もサポートもたくさんありますが、学校行事は、それぞれが新たに在籍する学校での行事のみとなり、旅行は、本当に限られたものとなります。ホストファミリーでは、いろいろなところに連れていっていただく機会がある生徒もいれば、まったく、そういうことがない生徒もいます。

 そんな中で、せっかくオーストラリアにいるのですから、できれば、いろいろな所を見て欲しいと思うのは、私の正直な気持ちです。でも、未成年であるために、自分たちで勝手に出かけることもできません。学校行事でもなくICETの正式行事でもありませんし、公式な時間の間を縫ってすることですので、不均等が出ることは避けがたいのですが、それを承知で敢行しているのが、こうした小旅行です。

 去年DHSの11年生は、Dabbo、Armidale、Port Stephensなど行く箇所か出かけました。MLCの11年生は、市内以外にはその機会がないまま1年を終え、今回は、それに相当する旅行です。MLCのリホさん、ユミさんの行き先の希望は、Canberraでした。

 いつも女の子一人の環境にいるサキさんも一緒です。車の中は、Miss Gが運転だったので、世界に起きていること、政治の内容、未来社会の展望などについての会話が日英の両方の言語で飛び交い、その切り替えがあまりにも自然なので、3人がバイリンガルになっていること、彼女たちの知的世界がグローバルな社会に向けて成長していることを確認できたことは、とても嬉しいことでした。

 彼女たちに「大人」を感じた4時間でした。(続きはまたの機会に)

旧議事堂の首相執務室のソファーに座ってみました。なんとも簡素で質素な造りです。力を誇示するようなものは何もありません。

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