プリンセス・シャーロット基金

投稿日:2010年10月15日

 たまたまラジオのニュースで、今日、ある学校でひとつの催しが行われていることを知りました。 

 女子生徒の長い髪を切り、それをある基金団体に寄付するというものです。その断髪を学校行事として行い、大々的に放映して、社会にその意義を広めようという試みです。

 このキャンペーンの元になっているのが、シャーロットという女の子です。「プリンセス」というのは、お父さんが、目に入れても痛くないかわいい娘に向ける愛情を表現する言葉です。

 彼女は2000年に誕生したミレニアム・ベイビーです。生後10ヶ月頃アレルギーが発生し、グルテンの入った食べ物がだめだということがわかりました。その後、グルテンが入らない食べ物を採っている限り、健康上問題はなかったのが、2006年に、頭皮の一部が円形脱毛に。その後まもなく、毛髪が全部抜けてしまいました。

 6歳のシャーロット、そして、ご両親の悲しみ、心配、絶望感は、想像を絶するものだったことは想像に難くありません。

 オーストラリア人のシャーロットは、お父さんの仕事の関係で、それまでフランスに住み、学校を5回も変わったので、両親は、ストレスが原因かと考えたようです。でも、脱毛症の原因は、頭皮に廻る血液の循環にあって、投薬や手術では、今の段階では治療ができないものとわかりました。唯一彼女を救えるのが、ウイッグです。

 いろいろ調べるうちに、シャーロットだけでなくそういう子供たちがまだたくさんいることを知ったお父さんは、その子供たちが普通の女の子として楽しい生活ができるよう、ウイッグを作るための毛髪を集めることにしました。そして、できたのが、プリンセス・シャーロット基金です。

 さて、ウイッグにできる毛髪は、どんな髪だと思いますか? 色は関係あるでしょうか?

長さは?

 どんな色でも、どんな髪でもかまわない、それが自然のものであれば。でも、パーマをかけるために、また、染めるために薬品を染み込ませたものは使い物にならない、ということです。長さは、約12インチ(約30cm) ということですから、かなりの長さです。

 脱毛症だけでなく、癌の放射線治療で毛髪を失い、ウイッグを必要とする人たちがたくさんいます。日本では、造成ではなく自然の毛髪を使ったウイッグは極めて高価で、なかなか手が出ないと聞いています。

 日本でも、きっと、毛髪の寄付を求めているところがあるのではないでしょうか。

 昨今は、茶髪が流行し、自然の髪を保つ人のほうが稀になってきたような印象があります。昔、私が若かった頃、「日本人の長いまっすぐな黒髪は、日本の男性だけでなく、西洋や他の文化の男性にも魅力を感じている人々が多いのだ」と、アメリカの人から教えてもらい、とても嬉しかったことがあります。

 セレブの影響や薬品会社やファッション業界の宣伝の効果が大きいのでしょうが、今の日本では、誰もが髪を染めることが当たり前のような社会になってきて、黒髪を保つことがむしろ、若者言葉でいうと、ダサイ、というイメージになってしまっているようです。

 男性も女性も日本人特有の黒髪のカッコ良さ、魅力が、そう感じられなくなり、逆に、薬品で染めた金髪や茶髪がかっこいいものと映ってしまっているのであれば、そうした感覚の変化は実に惜しまれることです。

 W杯のサッカー試合を観ていて、「なんで日本人は、あんなにも髪を染めるのか」と何度かオーストラリアの人々に聞かれました。特に、韓国の選手には少なく、日本人の選手に多かったので、それが不思議だったのかもしれません。日本の歴史や黒船の到来以来の日本人の西洋文化に対する畏敬や憧れや劣等意識や競争意識などのことをよく知っている人たちからは、「日本人は、髪の色を変えることでアイデンテイティを変えようとしているのか」とまで聞かれ、返答に窮したこともありました。

 中高生、大学生の女性の皆さん、髪を伸ばしたいと思っている方があれば、病気で必要としている方々にあげるという目的を加えてみてはどうでしょう。そんな目的で髪を伸ばし始めるのもいいかもしれませんね。そして、茶髪にしたいという欲求が起ったときに、自然の状態に保つことに意義があることを思い出せば、そうした誘惑も簡単に振り切ることができるのではないでしょうか。

 長い髪をある日切ったときのイメージチェンジも、そうした貢献が裏にあったら、とても爽やかなものなのではないかと想像します。

 中高生の年代は、自分が誰であるのか、何のために生まれてきたのか、どう生きればいいのか、どんな価値観が良いものなのか、いろいろ思い悩む時期です。将来に向けてのたくさんの希望があると同時に、先が見えないために、混乱することもあります。どんな洋服を着ればいいのか、どんな髪型にすればいいのか、どんな歩き方をすればいいのか、外見がとても気になるときです。そして、内面にもまだ自信がない時には、あまり人に覗いてほしくないし、出したくない、と思うこともあるかもしれません。

 そんな時に、こんな目的があって髪を伸ばしているのであれば、そのこと自体がひとつの誇りとなり、髪型に迷うこともなく、染めることは論外。使ってもらう人のためにも、美しい髪を保つことが大事になってきます。そして、その美しさを誇りに思うことができるでしょう。

 シャーロットの話や、似た体験を持つ人々の話をもっと知りたい場合には、こちらのサイトにどうぞ。

http://www.princesscharlottealopecia.com/OurStories/Charlotte.aspx

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