Martin農場
投稿日:2010年11月5日
2500ヘクタールという土地の大きさを想像できますか? 調べてみると、1ヘクタールが10000㎡=1町歩=3000坪とあります。坪数にして750万坪。それが実際にどのくらいの大きさかというと、四方八方地平線が見える土地に立って、「見える限り、全部が自分の土地」だというのがマーチン氏の言葉でした。
そんな大きなマーチン農場に招待されました。スワンヒルから時速110キロで40分。農場主のポール・マーチン氏は、週3日、マキロップ・カレッジで去年と今年、日本語を教えてみえます。
マーチンさんの農場は、稲とカノーラの栽培を主にされています。ちょうど、種まきの時期だということで、生徒たちの訪問に合わせて、小型飛行機の予約をしてくださいました。まず、案内されたのは、3週間前に、やはり、飛行機で種まきをしたという水田。日本の水田とはかなり違う雰囲気で、少し土を盛り上げた畦があり、あとは、ずっと水を張った土地が続いています。すでに、稲の茎というのでしょうか、葉というのでしょうか、緑の苗が水から頭を出していました。
10分ほど農場内を車で走り、大きなトラックから小型飛行機に稲の種を移し変える作業をしているところに移動しました。途中で、急停止。舌の青いとかげ、blue tongue lizardを見つけたということ。マーチンさんは簡単にとらまえて、生徒の手に。とかげは、おとなしくみんなに撫でられていました。
稲の種を積んだ飛行機は、水田のあるところに向けて飛び、私たちも車で移動。水田は、ずっと広がっているのですが、まったくの平らな土地なので、どこまで続いているのか見えません。そこに飛行機が、頭上をあちらの方向に飛び、また、向きを変えてこちらに飛び、ということを数回繰り返し、私たちも頭に、数粒の稲の種を授けてもらいました。日本の田植えの風情とは、かけ離れて違うものでした。
そこから、羊が消毒液をくぐる作業をしているところに移動。
17年くらい前になりますか、シドニーの北西に1000キロほど行ったCobarという町の高校に留学した西村君という生徒がいます。その高校の校長先生が、とてつもなく大きな農場を持ってみえ、西村君は、そこによく招かれました。野生のヤギやカンガルーを撃つ体験をしたり、ヤギを燻製にしたり、農場の柵の修理のお手伝いをすることもありました。
私は、一度、トラックの荷台に乗せてもらって4千頭いるという羊の群れを探しに出たことがありましたが、1時間ほど探しても見つかりませんでした。そのくらい、農場は大きなものでした。その西村君が、絶対にしない、と拒んだお手伝いがあります。それは、まだ小さな子羊の尻尾をハサミで切り落とすというものです。
チック校長先生の説明は、これは、羊の命を守るもの。そのままにしておくと、羊は清潔に保つことができず、ハエがつき、蛆がわき、最終的には死んでしまう、だから、これは、生活の知恵なのだ、と説明されたということ。今は、金属の輪をはめることで、自然に尻尾が落ちる方法を使っているということです。
私は、その時に、羊が長い尻尾を持って生まれてくることを始めて知ったのですが、マーチン農場で、羊に虫がつかないための消毒を1年に1度するという作業を見せていただきながら、西村君の体験を懐かしく思い出しました。
移動の際に、遭遇したもの。Locustと呼ばれるイナゴのベイビーたちです。パール・バックの「大地」に、イナゴ(バッタ)の大群に収獲を目に前にした中国の農地が丸裸にされていく恐ろしい様が描かれていますが、まさに、その通りのことが、オーストラリアでも起こります。一度、大群が押し寄せたら、なす術もなく通り過ぎるのを待ち、残されるものは、すべてを食い尽くされ裸になった土地のみです。1年の苦労は、すべて無に帰すのです。これほど、農家にとってむごいことはありません。
ウジャウジャと蠢く真っ黒なlocust。「たんぱく質が豊富なので消毒する前のものをつかまえて食べればいいんだろうけれど、誰も食べたくないよね。」とマーチン氏。消毒して殺すには、微妙なタイミングがあり、あと、1週間待って、地方の役所の人々と協力の上、消毒液を撒くのだということ。ここにも農場の抱える大きな苦労と悩みがありそうでした。
カノーラの畑に。すでに収獲が終わったあとで、あの見事な黄色い花は見ることができませんでしたが、でも、菜種を触らせてもらうことができました。
移動している間に、幹線道路にぶつかりました。道路から左右に分かれる道に立っている標識は、Martin Lane North(マーチン小路北)、Southというものでした。この農場の大きさの象徴のように思えました。
マーチンさんは、もっともっとたくさんのものを生徒たちに見せてくださりたかったのですが、残念ながら、そこでスワンヒルの町に戻る時間となってしまいました。
マーチン先生のお家にホームステイさせたいただいた拓人君と、その日、ホスト・ダッドのダンストンさんが夕方訪問されることになっていた博正君は、鴨撃ちという特別な体験をさせていただき、し止めたと嬉しそうに射撃の腕前を翌日誇っていました。