襟を正す

投稿日:2011年12月15日

 帰国した生徒たちは、そろそろ、文化の違いを実感し始めている頃でしょう。

 今が、正念場です。今が、留学の真価と成果を問われるときです。

 オーストラリアでのできばえ(真剣さ、取り組みに対する熱意、人々との交流の幅と深さ)は、こちらでのこと。残酷な言い方ですが、その努力は、日本からは見えないものです。

 それが日本で本当に評価されるためには、まずは、表に出るものがどう映るかということが第一前提となります。

 礼儀、服装、髪型、挨拶、歩き方、座り方、そうした表に出る一切のものが規定にはまっていることが求められます。

 オーストラリアでは、自分を解放し、自分探しをし、自分を広げることが求められました。違いがいい、違いが美しい、違うことに誇りを持つことを奨励されました。日本は、「違い」を嫌う文化です。一定のもの、規格にはまるものであることを大事にする社会です。

 留学して本当に自分を解放するには1年の猶予を要しました。今、その解放した扉を再度閉めることが求められています。

 留学は、出るのはらく、でも、帰国が大変、というのはこのことなのです。

 でも、それが、文化に対応する、ということでもあるわけです。留学後は、知っているはずだった日本の文化が、「異文化」になっています。 その異文化にどう対応すればいいのか。

 いってみれば、襟を正すということであり、ネクタイを締めてご両親に1年ぶりの対面を果たした生徒の例のように、どうしたら、自分が大人になったということを形で表すことが出来るか、と言うことを生徒たちが真剣に考えなければならない時です。

 オーストラリアと日本という、ふたつのまったく違った文化を体験した若者たちは、1年前に日本にいた自分には戻れません。戻る必要もありません。戻ったら、留学した意味はなくなります。

 戻るのではなく、培った豊かな文化的な柔軟性、精神力、国際的な視野、価値観を上手に使って、日本の文化に、適応して「良い生徒」に見える工夫が必要なのです。この際は、どういう人間という中身は返上しておいて、まずは、「良い生徒」としての形を整える、見せる、表に出す、ということが求められていることをしっかりと理解すべきです。

 それができたら、初めて、中身に目を向けてもらうことができます。

 礼儀やマナーや服装は、どこの社会にあってもTPOで必要とされるものです。TPOが上手に使い分けられるということは、社会性の最たるものでしょう。自分の周りのバウンダリーの変化を常に意識し、その動きで自分の言動やマナーを変えられることができるというのは、アートです。

 留学を終えた生徒たちは、そのことをしっかりと意識してこれからの生活にあたるべきです。

 オーストラリアでのアドバイスは机上のもの。言葉だけのもの。なぜなら、そこには現実のできごとも感情も存在しないからです。でも、日本に戻り、自分の体も感情も現実に求められることに合致させなければならなくなった今、そうした言葉がどういう意味を持つものであるかを実感していることでしょう。

 何度も言います。今が正念場なのです。留学生が戻る自国が外国に感じられるという感覚は、少なからず感じていることでしょう。

 その感覚を大事にして、だからこそ、自分の文化に、そして、自分の社会に敬意を表するためにも、自分の衿を正して、「大人」としての自覚で、日々の行動にあたってください。

 すべてが出る行動で判断され、それに意味があります。英語は何のために習ったのでしょう。使うためでしょう? そうしたら、日本に戻っても英語を駆使すべきです。

 礼儀は、どこの国でも相手に敬意を表するためには必要なことで。Respect、忘れないように。一挙手一投足、その人の人柄が出ます。

 言葉使いもそうです。大人に対してだけでなく、1年生、後輩に向けての言葉遣いは、そこにあなたの「品」が出てきます。言葉を崩してしまわないよう、くれぐれも気をつけましょう。

 生徒の皆さんに、自分の行動がどう映るかの自覚があり、それなりの姿勢、態度で表に出すことができれば、先生方も、親御さんも全面的な支援をしてくださることでしょう。

 そして、何よりも、その自覚が、留学を成功とするものとなります。

 Life is a game.という言葉があります。社会生活もひとつのゲームです。文化への対応もゲームです。ルールを知り、そのルールに上手に対応することで、相手に敬意を表することができます。それは、決して、自分を曲げることではありません。

 相手(文化を含めて)と接点があるところでは、それなりの行動を起こせばいいことです。それが、自分へのresepctとして戻ってくるのであれば、なおさらのことです。

 自分への誇りを忘れず、自信を持って、事にあたってください。自分の判断で、今、求められていることへの最善の対処、最善の行動を決めたらいいのです。ここでも、自己のベストが求められています。

 帰国した生徒と親御さんとで、このことの大切さをお話しいただければありがたいです。

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