1年終了
投稿日:2010年12月12日
12月11日。1年間の留学を終えた生徒たちが、無事に、日本に帰っていきました。
昨夜から今朝にかけて、1年間遠くから祈ってみえたご両親と、そして、ご家族のみなさんとの感激の波に包まれていることでしょう。
1月24日に始まった留学。ぎっしりといろいろなものが詰まった1年。「早かった」というのが全員の感想でした。
人間の赤ちゃんは、誕生した瞬間に大きなことをいくつか学びます。まずは、呼吸すること。そして、お母さんのおっぱいを舌で吸って飲み込むこと。そして、お母さんの注意を喚起するために泣くこと。その3つは、赤ちゃんの命綱です。そこから、始まって、様々な情報を取り入れ、同時に、お母さんや周りの人々とのコミュニケーションをとるために、笑顔と泣き声を使い分ける方法も学んでいきます。わずか1年で、赤ちゃんは大変貴重な、そして、莫大な量の技術を習得します。
高校生での1年間留学は、赤ちゃんの最初の1年に継ぐ、あるいは、それに相当するくらい大きな体験ではないかと思います。知らない土地でそれまで会ったこともない人々と、違う習慣の中でよくわからない言葉を使って生活し、互いに理解するためのコミュニケーション方法を模索し、性格のズレを刷り合わせていくことは、途轍もない量の学習を要求されます。
新しい環境での学習は、最初からそれをスムーズにこなしていく生徒もいれば、それ以前に習得した記憶と習慣と思考による検証が強すぎて、環境が自分に合わない、上手にいかないのは環境のせいだ、と悲鳴をあげる生徒もいます。
それまで16年間慣れた環境からある日突然に体験したことのない環境に飛び込むのですから、悲鳴をあげるのも無理もないことです。頭の中で準備し理解した留学は感情を伴いませんが、実際の生活は自分の感情だけでもやっかいなところに、さらに周囲の人間の感情が絡んできます。
でも、すばらしいことは、試行錯誤しながらも、新しい環境に順応していくことです。新しい絆が生まれるとコミュニケーションを深めることが喜びとなります。学習が楽しいものと感じられるようになると、もっともっと勉強したくなります。しかし、そこまで行き着くには、大変な過程を通るわけです。
「かわいい子には旅をさせよ」「他人の飯を食わせよ」といった表現がありますが、自分が置かれている立場がいかに恵まれたものであるか理解するのには、この方法が一番です。すべてあって当たり前だったものが一瞬にして消え、ゼロから自分の居場所を築かなければならない過程において、生徒たちは、一様に、親への感謝の気持ちを抱くようになります。
実は、これが社会生活を送る上でのすべての基本となります。
感謝する気持ちは、即、自分のあり方、学習の仕方に反映されます。それまでわがままの言いたい放題だったことを反省し、両親に対する感謝の気持ちを学習の熱意とし、そして、責任ある社会人になろうという気持ちを抱きます。
その感謝の気持ちは、新しい環境においても同じです。与えられた環境を感謝し、それに取り組む生徒は、実りも大きくなります。不満を言い、文句を言っている間は、自分が受け取れる実りはとても小さなものとなります。
命があること、元気であること、高校生の年齢で違う国に暮らす体験が持てること、まったく違う教育システムで学ぶ機会があること、それを感謝する気持ちが芽生えたときから、子どもたちを囲む人間関係が違ってきます。なによりも、子供たちの心構え、意識、気持ち、精神が変わってくるからです。
感謝を示す子供たちには、周りからもたくさんの感謝の気持ちが返ってきます。なぜなら、周りは、その子から喜びを得るからです。
感謝を示す子供たちは、自分の人生を創り出す勇気と希望を持ちます。なぜなら、この世にいただいた貴重な命と才能、それをフルに活かすことが両親への、そして、社会への恩返しになることを知っているからです。
感謝を示す子供たちは、与える喜びを知っています。なぜならば、人々の好意を純粋に受け止めることができ、与えられる喜びを知っているからです。
感謝を示す子供たちは、他の人々の愛情を素直に受け止めます。なぜなら、人々を信頼するだけの信頼を自分の中に持っているからです。
感謝を示す子供たちは、素直に伸びていきます。なぜなら、心が表に向けて開き、受け止める用意があるからです。
2010年の生徒たちは、そんな感謝の気持ちを持っている生徒たちでした。
だから、すてきな1年をありがとう!!と言いたいです。
そんな子供たちを送ってくださった日本のご家族の皆様に、心から感謝申しあげます。ありがとうございました。