言葉は習慣から
投稿日:2012年4月3日
言葉はとてもおもしろいものです。
私たちは、人によって言葉を使い分けます。どんな形式、どんな表現を使うかは、相手によって違います。
相手によっては、ひとつの言語だけでなく、英語、フランス語、日本語、スペイン語などの表現が日々の場によって、ポンポンと混じる場合もあります。それは、その表現が、その言語であるからこそ、意味を持つものだからです。お互いに、そのニュアンスがわかる人でないと会話は成り立ちませんが、その二人の間には、既に、言語を楽しむ関係が築かれているのでしょう。
同一内の言語でも、気軽な言葉、丁寧な表現、日本語のように敬語や謙譲語など、場と相手によって、私たちは使い分けをします。その上手な使い分けができればできるほど、交流や活動ができる範囲が広くなります。
どんな形式を使うかは、社会の習慣に基づき、自分が普段の生活の中で築いてゆく習慣によって作り上げられます。家庭の中での話し方、読む本、学校で受ける教育、学校やクラブ活動などで使う言葉、社会の中で接する人々との話し方、メディアなどを通じて、私達は言葉を覚えていきます。
丁寧語を例にとってみましょう。英語だったら、目上の人、大人には、”May I….” “Can I….” “Could you please…” “Would you like….”といった丁寧語を使います。日本語の場合は、敬語、謙譲語、丁寧語と、相手と自分の上下関係によってもっとずっと複雑になります。
以前、大人に話す時は、日本語よりも英語のほうが話しやすいと言った生徒がいました。
いつも敬語で話しをする相手の人に、ある日突然くだけた言い方をするのは、とても難しいことです。普段「あがりますか」といい慣れている人に、「食べる?」という言葉を使うことにはものすごい抵抗があります。でも、それを使い始めて毎日使っていたら、いつのまにか、その抵抗はなくなっていくでしょう。逆の場合も同じです。普段、敬語を使っていないと突然には出てきません。
文章で表現するということも同じです。いつも漫画チックな表現を使っている人は、きちんと話をしなければならない場になっても、なかなか長い文章を作ることができません。話しがブツブツと切れてしまい、語尾がない会話になってしまっています。いつも、単語だけの日本語で話しが通じているのでしょう。だから、いざという時に文章が出てこない。丁寧語も出てこない。普段、その習慣がないからです。
英語で話すということも、全く同じことです。英語を上手に使えるようになるには、自分が口に出して、使ってみるしかないのです。いくら本を読んでも、いくら単語を覚えても、いくら文法を覚えても、使ってみなければ自分のものにはなっていきません。
授業中に、キャンパスの中で、ホストファミリーと、友達と、今覚えたことを使ってみる。ホストとの時間に使ってみる。
話さなければ、いつまで経っても話すという「機会」にも慣れることができないし、話すということにも慣れません。だから、ホストとの人間関係を言葉で結んでいくことが上手にできなくなってしまいます。
学校であったこと、ニュースで聞いたこと、今日学んだことなどをホストファミリーと毎日話す努力をしていたら、いつのまにか自然にそうすることが当たり前の状態になっていきます。
日本人の友達と英語で話すということは、最初は実に奇妙で面倒くさいことのように思えます。実際、とても難しいことです。照れくさい。恥ずかしい。面倒。理由は、慣れていない。ただ、それだけです。でも、一旦やってみると、そんなに照れくさいことではない。結構、楽しいことだということがわかります。いいのです、間違っても。おかしなことを言ってしまっても。
要は使ってみること。新しい単語や言い回しを試してみること。それを習慣にすることなのです。
仲間の中で英語を使ってみるということは、相当に勇気が要ることのようです。だからこそ、英語で懸命にやりとりをしている場面を見ると、その健気さと努力に心に熱いものを感じます。自分の目標、願望に向かって、魔法の杖を上手に振り始めているのですもの。
言葉は習慣からできていきます。だから、ぎこちなくても、上手にできなくても、まずは、毎日その努力を続けることが大事です。
英語に上手になりたかったら、上手になるまで練習するしかありません。
情報が得るのは日本語のほうが早ければ、日本語をその時は使ったらいい。日英両方が上手に使いこなせるようになることが、あなたの目的なのだから。
ただ忘れてならないことは、留学中は、英語を徹底的に学ぶ時なので、英語が最大限に学べる環境を自分で作り、維持すべきだということです。
どうしても英語では自分の気持ちが伝えられない時には、”I can’t explain myself in English. Can I say it in Japanese?”と言って日本語で説明する。それが済んだらまた英語に戻る。疲れてしまってどうしても日本語を使いたい時には、”May I use Japanese for the next 15 minutes?”と限度を設定して話すのもひとつの方法です。
それが終わったたら、また英語に戻れるきっかけを作っておくのです。
こんなふうにして、私たちは、自分の中に言語を積んでいくのですね。