詩人を訪ねて

投稿日:2011年1月17日

(2o10年12月29日)

 詩人や作家の足跡を追って、ゆかりの場所を訪ねるということには、ロマンがあります。

 といっても、今回は、私はまったく知らない、そして、名前すらも読めない、Peter Skrzyneckiという詩人がかつて訪ねたことのある、そして、そのことが詩になっている民族博物館に行くという旅です。ロマンも何もありません。

 行き先は、Armidaleというシドニーから580キロほど北にある町です。現在は、約25000人の人が住み、NSW州の中では、シドニーに継いで、多国籍民族の住む町になっているということです。

 この町は、約20年前に訪問したことがあり、特別な思い出のあるところです。建築物が美しいと聞いていた通り、美しい町だった印象が強く残っています。至るところに教会があり、本当にきれいな瀟洒な感じのする町でした。

なんともかわいらしい市役所

 今回、ここに来ることになったのは、12年生がHSC(卒業試験)でこの詩人の詩を勉強しているので、その雰囲気を味わってみてはどうかという提案がESLの先生からあったからです。実体験をすることほど、印象を強めるものはありません。

 クリスマスの6週間という長い休暇を日本に帰国せずにがんばっている生徒が4人います。当初の予定は、12年生全員が、この休暇をシドニーで過ごして、来年度の学習に備えることになっていたのですが、お正月に帰国すると決めた生徒が徐々に出てくるにつれ、残ると決めている生徒への心理的な影響は相当なものだったように見受けました。その中でしっかりとがんばっている生徒たちを元気付けるためには、良いアイディアでした。

 4名のうちの一人サキさんは、休暇を有効に過ごすために、スワンヒルで1ヶ月過ごすことにし、すでに出発していました。日本語がまったく無い環境で4週間を過ごそうという武者修行です。その体験は、新しい境地を拓くと同時に、彼女の精神性を鍛えるものであり、卒業に向けての残り1年の厳しい勉学の道を乗り越えてゆけるすばらしい英気を養うものとなることでしょう。サキさん、その勇断に敬意を表します。

 Armidaleには、そういうわけで、コウメイ君、タクミ君、ヒカル君の3名と一緒に出かけることになりました。

いくつも立ち並ぶ教会

 生徒たちに詩人について説明をしてもらうのも楽しみですが、何も知らないで行くのでは、あまりにも味気なく、本当は詩を読んでから行きたかったのですが、その時間を作れないまま、少し調べただけで出発になりました。

 Peter Skrzyneckiは、1945年にドイツで、ポーランド人とユクライナ人の両親のもとに生まれ、オーストラリアには4歳の時に両親と移民してきました。高校の英語の先生を通して、文学を愛する心を養い、その後、小学校の先生になるための訓練を受けました。その頃から詩を書くようになり、その後、大学で文学を専攻し、本格的に文学の世界に入ったようです。

 現在高校生がHSCで学んでいるものは、「Immigrant Chronicle(移民誌)]という詩集に出てくるものです。オーストラリアにおける移民の生活は、決してばら色のものではありません。経済的にも苦しく、社会の中での人種差別や軋轢などがあり、帰属する場所を模索する過程など、移民の生活を移民者の視点から詩にしたものです。

 オーストラリアは移民の国。現在のこの国を形作っているのは、移民の力であり、移民の歴史です。

 詩の中に出てくる博物館は、3人がすぐに見つけました。 

Armidale Folk Museum

 陳列してある物は、この地方での生活誌を物語るものばかりですが、肝心の詩人が詩の中に列記したものの多くは、他の博物館に移されてしまったということでした。でも、詩の中に出てくるものを探しあてた時には、その度に、嬉しそうな歓声があがりました。

  

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