新年を迎えて

投稿日:2011年1月1日

 あけましておめでとうございます。

 皆様の2011年は、どのように始まりましたでしょうか。

 ここシドニーでは、恒例のハーバーブリッジの華やかな花火で幕が切って落とされました。百万人を超える人々がハーバーに集まり、シャンペンで歓声をあげて祝う新年。除夜の鐘の静かな響きに、心の中に一人ひとりが深い想いを馳せ、そして、神社やお寺にお参りに行く日本。まったく赴きの違う新年の迎え方です。

 フランスとドイツがすっぽりと入ってしまうほどの面積が洪水になっているクイーンズランドでは、20万人の人々が避難を余儀なくされ、南のアデレードや西のパースでは45度を超す猛暑に見舞われ、北半球は雪で大混乱。

 新年を無事に迎えられる状態にあるということに、まず感謝したいです。

 もう10年以上も前に、自然災害がもっとも経済を脅かすものとなる、とアル・ゴアが強調していましたが、その予言は、まさに的中しています。復興だけではなく、オーストラリアでは農産物の生産にも多大な影響があり、物価はここ5年ほど右上がりに大きなカーブを描いています。

 長年にわたって築きあげてきたものが、自然の猛威の前に一瞬にして消え失せてしまうのですから、経済的な打撃だけではなく、そうした状況を乗り越える挫折しない強靭なバネと、将来への希望を捨てない強い心が、これからは、一層必要とされるようになります。そして、お互いに支えあえるコミュニティ精神もさらに大事になってきます。

 インターネットの普及は、情報だけでなく、物流においても、生活スタイルにおいても、ものの考え方においても、日常生活のすべての部分において大きな変化をもたらしてきています。情報は一体誰のもの、誰がどのように情報を操作するのか、そして、情報が氾濫する中で、何をどう使えばいいのか、正しいものは何なのか、などなど考えなければならないことばかりです。ウイキリークスによって、世界は、また新たな局面を迎えています。

 教育の面においても、大きな変化が起きてきています。以前は、情報を握るのは大人でした。今は、子供たちが同じだけの、あるいは、もっとたくさんの情報を保有しているかもしれない時代です。教えるということはどういう意味を持つのか、何をどう教えればいいのか、学校が果たす機能は何なのか、どういう大人に導くべきなのか、どのような情報をどのように使うのか、など真剣な議論が必要な時代に直入しています。

 従来の教育方法が上手に機能しなくなる時代は、もうすぐそこに来ているようにも思えます。

 実際に、日本において大学を卒業した多くの若者たちに働く場所がないという状況は、大学生の数が多すぎる、日本の経済が停滞している、ということだけに問題があるのではなく、社会が、こうした世界の急速な変化についていっていない、そうした動きに柔軟に対応できる子供たちが育っていない、という2つの面にも原因があるのではないかと思えます。

 そして、世界は、刻一刻と様相を変えていっています。外交の面でも、軍事の面でも。

 そうした中で、個人の幸せを追求しながら、他の人々の幸せや成功に貢献できる生き方を模索し、人生を築いていくことは、とても大変なことです。

 オーストラリアにいますと、中国や韓国、そして、東南アジアの学生たちにものすごい勢いを感じます。日本の若者たちは、総じて静かであり、受身です。姿勢だけみたら、日本はいずれ置いて行かれる、こんなにエネルギーが違うのであれば、太刀打ちできない、という焦燥感を持たざるをえません。

 留学という特殊な状況に身をおくことで、問題に遭遇し、問題を見抜き、新しい発想で解決する力をつけ、自分の道を拓くために交渉し、そして、物事を実践していく、という力を養っていきます。そこには、コミュニケーション能力が必要とされます。語学力は、その一部でしかありません。効果的なコミュニケーションは、心の動きを、言葉と行動でどう表現するかにかかってきます。

 そうした訓練を1年間、あるいは、3年間経て、通常ではなかなか育たない資質を積みあげていく子供たちが、強く逞しくならないはずがありません。

 留学を体験した若者たち、自分の体験から得たことに大きな自信を持ち、自分が得た力をいろいろなところで思う存分発揮して欲しい。それが、また、次に挑戦するエネルギーをもたらします。日本に帰国して縮こまってしまうのではなく、大いに力を発揮し、これからの日本を持ち上げて欲しい。後ろ向きに歩いているのではないかと思われる節のある日本、未来に向かう明るいみなさんの力を活かしてください。そうでなければ、なんの留学だったのか・・・ 得た資質、能力、才能、力を使わなければもったいない。そして、使うことで磨かれ、さらに成長し、大きな器の人間になり、それが、社会の、そして、国のためになっていくのです。

 これから留学を体験する若者たち、自分の力を培うためには、挑戦すること、やってみること、です。たくさんのチャンスが待っています。勇気を持って、やってみること。失敗してもいいのです。成功から学ぶよりも、失敗には、学ぶことがたくさんあります。留学の生活は試行錯誤です。でも、挑戦しない人生には、学びも限られます。

 挑戦することが、自分の人生を創ることです。

 そうした若者の姿勢を応援してくださる方々に、心から感謝いたします。

 2011年が、卒業生、留学中の生徒、これから留学してくる生徒、そして、ご家族の皆様を含むICET Family全員に充実した年となりますよう、そして、この地球上のすべての人々にとってよりよい世界になるよう、そして、するよう、一緒に手をつないで歩きましょう。

 

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