クジラの坊や
投稿日:2012年8月2日
私は、Newport(ニューポート)という町に住んでいます。
シドニーの北部にあるビーチ沿いの郊外の町です。シドニーの中心部の市街地からは車で1時間ほどかかります。学校のあるDHSからは30分です。
普段は静かなNewportが昨日の朝は騒然としました。ヘリコプターが何機も飛び、救急車やPolice carが何台も出動し、人々がビーチにと詰め掛けました。
ク ジラが打ち上げられたのです。それも、砂浜ではなく、ロック・プールという岩を掘って作った海水プールの中にすっぽりと。柵は捻じ曲がり、プールの中に、 巨大なクジラが横たわっていました。つやというか張りというか皮膚の感じから、すでに命が無いことはなんとなくわかりました。
ここは、南か ら北の暖かな海に向かうクジラの通り道です。普段でも、この季節には、潮を吹く様子や尾びれをあげる様子などが海岸沿いに見られることがあります。このク ジラは、どんな旅をして、どこからどのようにここに流れ着いたのでしょう。昨日の波は、普段あまり見ることがない巨大な波で、上にあがった波は、しぶきを 遠くまで飛ばします。そんな波に押されてここまで来たのでしょう。
翌日に解剖されました。まだ、5歳くらいの子どもで、呼吸器の病気で数日前に命を引き取り、痩せ細っていたということです。
シ ドニー湾では、先日湾内で赤ちゃんクジラが生まれ、市民の話題になったばかりです。何年か前も赤ちゃんクジラが生まれた際には、デニスという名前がつけら れ、今デニスがお母さんクジラの下にもぐってお乳を呑んでいますとか、お母さんクジラの背中をすべっていますといった実況中継が数日続き、人々がクジラの 動きに合わせて、海岸沿いを車で移動して歩くようなこともありました。
そんな具合なので、捕鯨には非常に批判的であり怒りを顕にします。日 本とオーストラリアの友好関係は、世界でも稀なほどに極めて親善的なものですが、こと捕鯨に関しては、袖を連ねることができません。数年前まで、日本では 捕鯨に関する報道、特に、オーストラリアと問題になっていることに関してのものは皆無でした。それが、捕鯨船がシー・シェパードに攻撃されるようになって から、急激に、そのことに関する報道が出てくるようになりました。
日本とオーストラリアは、捕鯨に関しては、まったく合致する点が皆無の報道が繰り返されます。接点が無いし、見る視点がまったく違うからです。それゆえに、元々感情論が混じっているものがますます感情的に煽られるようなことになります。
国 により、文化により、情勢により、報道がどのようになされ、どれくらい違うものであるかを生徒たちが考察するには、捕鯨は、特に日豪の関係の中では最良の 例としてあげられるものです。生徒たちに、両国の報道記事をひとつずつ調べて持っていらっしゃいと指示を出したその夜にクジラがビーチに、それもこんなに 身近なところにやってきたそのタイミングに、戦慄が走る想いでした。
マオリ族にとっては、海を守る神様であるクジラ。北への遠い旅に疲れてしまい、通常ならば、その遺体は海の藻屑となって大自然の中に散っていくのでしょうが、この5歳のクジラの坊やの遺骸は、海岸沿いの土の下に埋葬されました。
小さな魂が仲間のところに戻れますよう。
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以下は、セイヤ君からの投稿です。
「オーストラリアに来てもう6ヶ月が経過しました。
シドニーの空港に到着し留学が始まることにドキドキしていた自分がまるで昨日の事のように感じられます。16年間 親の元で全く不自由なく生活していた僕。何か気に入ならないことがあれば、文句を言っていた…… 本当に子供でした。
し かしこの6ヶ月間、僕は一歩大人に近づけたと思います。知らない土地で、言語が通じない土地で、親がいない土地で、自分を精一杯出そうとがむしゃらでし た。オーストラリアに来て2ヶ月間は本当に辛い日々でした、学校でも、Aussieの人が言っていることが理解できなかった、自分から話す勇気がなかっ た、ただその人たちの周りにいて彼らが話していることを聞くことしかできなかった。しかしこれは今となればいい思い出の一つなんですがね。今では彼らと毎 日凄く楽しく過ごしています。
この留学は決して英語力のためだけでは決してない。この一年間は信じられないくらいに自分を成長させてくれて大人になることができる。今僕はそれをとても感じています。オーストラリアに来て本当に良かった。
ここは僕の原点です。」 From Seiya
ありがとう、セイヤ君。
わずか6ヶ月前には想像もできなかったところに彼が達していることがよくわかります。これが、留学の醍醐味です。
Great whale, may your spirit fly free and may your body be returned to grandmother ocean. May your pod know your soul is sound. Thank you for your majesty, the silent strength you carry across oceans, the dignity in purely being your natural greatness and the ancient love of the ancestors you embody. May we earth brothers and sisters hold you in our memory with gratitude and love, and may we always know our duty in living harmoniously with you upon this great earth. Peace to you, my ocean friend.”