栄光と影
投稿日:2012年8月4日
オリンピックは、華やかです。
たくさんのヒーロー、ヒロインが誕生します。
世界の注目が集まり、世界中からの期待が寄せられます。それゆえに、その裏にある戦いも熾烈です。
選手の上にかかる心理的なプレッシャーは、想像を絶するものがあるでしょう。
今回のオリンピックには、ツイッターという新兵器が登場し、ツイッターには決してよい情報だけが流れるわけではなく、その影響をもろに受けてしまっている選手も少なくないようです。選手の心理的なプレッシャーをさらに悪化させている面は否めないようです。
プレッシャーは、エネルギーになる場合と破壊的・壊滅的なものとがあります。
選手として選考されるまでにもいろいろな物語があり、そして、この2週間は、いろいろな意味で、それぞれの未来にも関連します。
日本の選手のことは、こちらではまったく報道されませんので、オーストラリアの選手のことに少し触れてみます。
オー ストラリアは、優れた水泳選手を生み出していますので、メダルにかかる期待も半端ではありません。そのメダルがなかなか出てこない中、Stephanie Riceというすばらしく魅力的な水泳選手が200mの個人メドレーで銀メダルを獲得しました。プールから上がった瞬間のインタビューで、「私は両親を失 望させてしまった」と泣き出してしまいました。
彼女は北京五輪で金メダルを3つも獲得しているので、自分に対する失望だったのかもしれませ ん。また、オリンピックの前にプレゼントされたという相当きわどいビキニ姿を自分でツイッターで流し、それに対して多くの批判を受けていたということなの で、そこでのプレッシャーもあったのかもしれません。
両親がインタビューを受け、「私たちは失望などしていない。むしろ、誇りに思っているのに・・・」と当惑ぎみの表情で応えていました。
オーストラリアのスポーツ解説者が、「オーストラリアの水泳チームは、練習に怠けている」なんていうことを言ったので、それに対して猛攻撃が起こったり・・・と。 本来のスポーツ以外のところでの騒ぎのほうが大きいようです。
そんなところに起こったのが、Josh Boothというローイングの選手の事件です。
彼は、ファイナルが終わった後、1日パブで過ごし、夕食に立ち寄っていたレストランと周辺の店で、暴れてしまいました。
「普段のキャラクターとは違う」「ローイングの結果に失望した欲求不満の感情的な爆発だった」と釈明しています。
どう釈明したところで、そして、どのように陳謝したところで、この事件がオーストラリアのイメージに、一緒に行っている選手たちに、そして、オリンピックそのものにマイナスに与えた影響は、取り返しがつきません。
決して越えてはならない一線を越えてしまったいい例です。
そ れ以前は、たとえレースに敗れたとしても、彼は、オリンピック選手という名誉のバッジを誇示することができ、誰からも賞賛を浴びることができる存在であ り、自分を律する上でも、それが基軸となったはずのものが、そのどのくらいかの瞬間のできごとの後は、オリンピックでの不名誉、オリンピックから強制帰国 された重い看板を背負って歩かなくてはならなくなります。
そのわずかな時間をどんなに後悔しても、それを取り除くことはできません。オリンピック選手という名がある分、背負う荷物も重くなります。
なぜ、そこで踏み留まることができなかったのか・・・
私 は、彼にとって、こういう「感情的な爆発」は別としても、このくらいなら、そこまでなら、と自分の限界を引張る瞬間は過去にもたくさんあったのだろうと推 測します。その推測は、毎日の学校生活の中で、日豪に限らず、高校生という年齢の子どもたちを見ていて、そして、社会の人々を見ていて常に関連性を見てい る結果からこの例にも充当できると確信するからです。
日本語に「けじめ」という言葉があります。これが、私が言いたい、「一線」と同じ意味 だと思います。ひとつのことから次のことに移る際のけじめ、親しき仲にも礼儀ありのけじめ、騒いでいい時と静かにしているべき時のけじめ、先生の話に耳を 傾けるか想像の世界で遊んでいるか、遊ぶときと勉強するときのけじめ、居るべきときにそこに居る(その前にしていたことを次の行動に間に合うように切り上 げられるかどうか)か遅れるか、今すべき課題に集中するか隣とおしゃべるするか、授業に臨む姿勢とそうでないけじめなどなど、すべてが、前後の脈絡の中 で、どこにその瞬間、一線があるのかを見極め、どちらに留まるかを自分で選択しなくてはなりません。
そのけじめがつくかどうかは、学業の成果にも当然反映されますし、社会生活の中で、自分が周りに信頼されるか逆に周りからの信頼をどんどん失うかといった決定的に重大なことです。
Josh Boothというこの青年が失ったものはとりかえしがつかなく大きなものです。でも、このことから彼は、これからの人生に対して学んだことは比類なく大き くものであり、彼が今回学んだことを実践に出していくことができれば、きっと、多くの人々からの支援を再び得ることができるでしょう。
で も、この重い十字架を背負う結果になる前に、線をこさない訓練ができていたら、彼の人生はまた違うものになっていたことでしょう。だから、高校生の今、日 本とはまったく違う環境の中で、線がよく見えない瞬間がたくさんある中で、生徒たちが、この1線は越えたらダメということをしっかりと学ぶ必要があるので す。
言われる生徒たちは、うるさいと思うでしょう。でも、それを感謝して直そうとしている姿勢には、未来への大きな成長を見ることができます。
今日は、女の子たちは、Costume Partyを計画しているということで、昨日も、どんな衣装を着るのかで話が持ちきりでした。すばらしい青空に日になっています。女の子たちの興奮したときめきが伝わってくるようです。
きっと楽しい1日になることでしょう。