アジアの世紀
投稿日:2012年10月29日
「アジアの世紀」— オーストラリアが軸と決めた未来像です。
10月28日に、中国とオーストラリアの国交40周年の記念式典がありました。両国のこれからの発展を祈り、互恵関係を続ける努力をしていくことが誓われました。
昨年11月にオバマ米大統領が風雲のように現れ、突然の日豪米の軍事協定強化が発表され、多くのオーストラリア人が中国との関係が悪化してしまうことを怖れました。オーストラリアと中国の経済関係は、切っても切れないものであり、オーストラリア内での中国語は英語についで大きなものになっています。
そのために、政府は、その関係を大事にするためのあらゆる努力をしてきています。
オーストラリアには、時々遥か遠く未来を予測したビジョンを据える政治家が出てきます。オーストラリアがイギリスの植民地であり、英国の支配を強く受けているだけでなく、移民してきた人々もイギリスを祖国とみる人々がかつては多かったので、文化的にも政治的にも、英米を仰ぎ見るのはある意味で当然の流れでした。そんな流れの中で、「オーストラリアはヨーロッパではない。地理的にはアジアだ。アジアと親交を深めよ」と90年代の始めにオーストラリア人の意識を向けたのはポール•キーティング首相でした。
28日にも次のような発表がありました。
今世紀は、オーストラリアにとっては、アジアの世紀。中国が大国となってリーダーシップを執るようになることは歓迎すべきこと。学校のカリキュラムには、アジアの言語—マンダリン、日本語、インドネシア語、ヒンズー語、韓国語を入れ、学生たちは、そのいずれかを学ぶこととする。それぞれの国の歴史と文化を教える時間も設定する、と。
ヒンズー語が入ったのは、先日ギラード首相がインドを訪問し、ウラニウムの売却を決め、印豪の関係をハワード時代以上に深めてきたからです。インドが、核兵器を保有しているにもかかわらず、核拡散防止条約に加盟していないということでウラニウムを豊富に埋蔵しているオーストラリアは売ることはずっと拒否していました。それが、ブッシュ元米大統領とハワード豪元首相が前後して訪印した際に、ウラニウムの売却が決まりました。倫理姿勢も経済と軍事の前には変わるのだという印象を当時受けたのですが、それをきっかけにそれまで冷えていた印豪の関係は、一挙に深まりインドからの移民も一挙に増え始めました。
こういう外交政策の裏では、中国の会社にとてつもなく巨大な農産地を売却してしまったり、ウラニウム採掘のためにオーストラリアのすばらしい自然環境を破壊していったりと、さまざまな国内での矛盾があります。そうした、国策や外交の是非は、どの立場でどのよう利益を受けるかによって大きく異なるでしょう。しかしながら、国が大きく躍動していること、そして、他の国々との互恵を必死に模索していることは確かです。
国交40周年の祝賀どころか、尖閣諸島の所有を巡ってあれよあれよという間に、経済や友好関係はとりかえしのつかないダメージを追ってしまった日中関係とは対照的です。一体、外交とは何か、国策とは何か、誰のためかということを考えざるを得ません。
16歳、17歳というこれから未来を創る若者達が、オーストラリアという歴史の若い、そして、常に大きく躍動しているオーストラリアという国で1年なり3年を過ごすことで、国が持つ活力を自分の未来の活力として取り入れ、日本の未来に、今とは別の活力を生み出せるリーダーたちに育っていって欲しいと願います。