教育は応用力
投稿日:2012年11月7日
オバマ大統領の再選が決まりました。
4年に一度狂気の嵐を巻き起こすアメリカの大統領戦は、本当に大変なものだと思います。あの熱狂と、使う莫大なお金とエネルギーを使える場所は他にたくさんあるのでは思うのですが・・・ それにしても政治家というのは、ご苦労な職業です。どんなに一生懸命やっても批判の矢を浴び、現代の多様で複雑な社会の要望に応えるのは、簡単ではありませんでしょう。
先日、たまたま南カリフォルニア大学で教えてみえる教授と時間を過ごす折がありました。「選挙戦の間、アメリカから離れていられることがどれだけ幸せなことか。国を二分してしまう選挙戦は本当に辛い、なぜ、こんな戦い方をしなければならないのかわからない」と嘆いてみえました。そして、今、アメリカは、いろいろな制度やシステムがスムーズに動いていないので、なかなかと生活が大変だ、とも。
そのひとつは、アカデミックの世界と実践力ということです。
大学で教えることの多くは理論であって、実社会では即戦力になるものは少ない。今は、名門大学を出ても、実社会では戦力になれないために就職ができない例が多くなってきているというのです。日本でも、たくさんの大学院が増設され、喜んで入ったものの卒業時点では多くが就職できない憂き目にあったということがありました。また、有名大学を卒業してもきちんとした職業に就かない若者も少なくないようです。
恐らく、こうしたことは、教育の内容と実際社会が必要としている能力との間に大きな乖離があるのではないかと思います。
先日、面談の中で、ある生徒がこんなことを言っていました。
「日本の教育では、覚えさせることしかしない。覚えて、それに対してどれだけ覚えているかを測る試験があるだけで、知識の応用を教えない。オーストラリアに来て、初めてわかった。学習は、覚えることもある程度大事だけれど、本当に大事なのは、知識を応用する方法を学ぶことなのだということが。」
そして、「日本の教育もそういう教育に変わっていく必要があると、先生、思いませんか?」と。「だから、ICETのようなプログラムがあるのよ」と言いたかったのですが、それは控え、そうした斬新な教育をしている大学の話をし、実践力が得られる大学を選択しなさいよ、という話で終わりました。
この複雑な世界を望むように生きていくためには、知識だけを得てもどうにもなりません。道具になる技術と実践力と、そして、先を見る洞察力と勇気が必要とされます。従来の知識の詰め込み型の教育だけでは、「活きる力」は付きません。そうした力を少しでも留学中に付けていって欲しいですネ。
こういう疑問、質問を生徒がぶつけてくることがとても頼もしく思えました。でも、その一方で、彼らを迎えてくださる方々は、こういう批判的な視線を養ってきている若者たちを、さらに大きく包む度量と勇気のある先生がたであることを願わずにはいられません。