目に見える成果、見えない成果

投稿日:2012年11月21日

IELTSのテストについて先回触れました。

学校教育のすばらしいところは、ある一定のことを一定のレベルで誰にも行き渡るようにすることです。しかしながら、そのシステムの中には、教えたものに対してどれほどの知識を吸収しているかを測るという目的で、試験というものさしがあり、そのものさしで測った結果で次のレベルにどれだけ適するかということが決められます。そのものさしで測れるもの、測れる結果に関心、興味、信じるものがある人たちには、そのシステムは非常に便利なものであり、受験者も自分がどの程度学習したかの成長がわかると同時に、同じシステムの中にいる他の人々に比して、どの位置にいるということもわかります。

世の中の全体が、このシステムで動いています。

その一方で、このシステムには、大きな弊害があります。人間の資質、成長のほとんどに対して、それを測るものさしがなく、しかも、それがどういうことを測る目的であるかもよく理解しないまま、見える数値だけに価値を置いてしまいがちだということです。従って、多くの場合、授業中に集中力があってよく聞き、復習して習ったことを頭に入れ、記憶として呼び戻す能力が高い生徒が、高い数値の結果を得ます。起こっていることに夢中になり、先生の言葉よりも起こっている事柄や人々の表情や反応に関心があり、一人でコツコツ勉強するよりも活動に従事しながら学ぶほうがずっとわかりやすい生徒にとっては、文字だけのテストはとても難しいものとなりましょう。

たとえとしてよくあげられる例があります。アメリカでのことですが、ある大学の電子工学部の学生が試験を受けました。試験は、テレビの中身を分解してまた組み立てるというような内容です。ある学生は、紙の上での試験問題にほとんど答えることができませんでした。ところが、実物のテレビを使って解体・再構築を試みた際には、この学生が誰よりも正確に上手に早くできたのに比べ、紙の試験では満点を取った学生が、テレビを前にして解体するためのドライバーさえも使えなかったというものです。

みなさんは、これをどう受け止められますか?

どちらが頭がいいと言うのでしょう? 通常、私たちが学校生活で当たり前として受け止めているのは、紙の試験で高い点数を取る学生のほうが頭がいいと信じます。でも、実際に物を言うのは、実物を動かせるほうなのですよね。でも、この学生はテストの出来が悪かったので、頭が悪いという印象を周囲に与えてしまっただけでなく、実技に秀でても、自分は頭が悪いと信じ込んでしまうのです。

残念ながら、これが世の中の教育システムの常です。学生本人も、保護者も、先生も、数値崇拝、名前崇拝の罠に簡単に陥ります。社会全体がそれで動いていることなので仕方のないことなのですが・・・

しかしながら、ICETの保護者には、その罠に落ちていただきたくないのです。高い数値が出ているのであれば、それは、手離しで褒めてあげてください。それだけの努力があったのです。では、数値があまり変わらなかったというケースがあった場合、それは、努力が足りなかったということなのでしょうか? 決してそうではないのです。

例えば、他の領域が全部伸びているのに、Listeningという領域だけ数字ではほとんど伸びを示していないとしましょう。Listeningの問題は、内容を聞いて、それに対する質問に筆記で答えるというものです。たまたま出たトピックに対しての知識が薄かったということはありうるかもしれません。でも、授業に出て半年前よりもずっといろいろなことが理解できるようになっている、ホストファミリーとの会話はもうほとんど不自由なく聞けるし話せるようになっているという生徒(全員がこの状態にあります)が、伸びていないということは到底考えられません。でも、IELTSのテストでは点数が以前とほとんど変わっていない。となると、自分の英語力が伸びていないということなのかと、生徒は、一瞬にして真っ暗な気分になり、自分の力に不安を持ちます。

先生と一緒に座り、問題を振り返り話してみると、問題をとてもよくわかっているし、答えもよくわかっています。なぜ点数にならなかったかというと、スペルが間違ったり、言い回しが上手にできなかったりと、むしろ、書くことにミスや不足があり、わかっているにも関わらず、点数としては出なかったということなのです。でも、表に見えるのは、ある日の状態を断面で切って測ったこの数値だけなのです。怖いことです。何が怖いかというと、それをみんなが信じて、それで判断をくだす、ということがです。

 生徒の留学中の成果は、到底数値などでは測れるものではありません。日本の保護者の皆様や先生がたには、この見えない部分がどうしたらわかるようになるのか、そして、見えないものをどう引き出していったらいいのかということを今からお考えいただければ幸いです。

 

 

 

 

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