ジョハリの窓
投稿日:2013年2月3日
「ジョハリの窓」という概念というか、考案されたモデルがあります。
英語では、Johari Windowと呼ばれています。カリフォルニア大学の心理学者Joseph LuftとHarrison Inghamが考えたモデルで、その後、急速にコミュニケーションや対人関係のコーチングで使用されるようになり、二人の名前の頭の部分を組み合わせて、Johariという名前になったということです。
御存知の方もいらっしゃいましょう。使い方は、いろいろありますが、まずは、形をご紹介します。
4つの窓がある格子を思い浮かべてください。
ひとつ目(左上)は、周囲の人が知っている自分、そして、自分も知っている自分。この部分は、日常においての言動・行動として外に見える部分です。氷山の一角の海上に現れている部分です。
2つ目(右上)は、人には見えるけれど、自分ではよくわかっていない自分です。才能とか技能とか価値観というのは、自分ではそれが当たり前で特に意識する部分ではなくても、周りの人から見たら、それが際立ってみえるような部分です。すごいなと言われて、改めて自分のすごさを認めるような場合もあれば、何かを指摘され訳も分からず怒りを感じるようなこともあるでしょう。良くも悪くも人から指摘されたこと、言われたことは、結果的に自分を肥やす贈物となる部分です。
3つ目(左下)は、自分はわかっているけれど、人にははわからない自分です。人とシェアする部分としない部分がある自分とでも言えばいいでしょうか。すべての人間が、自分の持っているもの、考えていること、感じていることをシェアできるわけではありません。意図的な場合もあり、物理的な理由による場合もありましょう。あるいは、タイミングの問題もあるかもしれません。簡単にシェアできる部分や事柄もあれば、考えてからようやくシェアする部分もあります。本当に信頼できると感じたらシェアする部分もあれば、誰ともまったくシェアしない部分もあります。
4つ目(右下)は、自分にもよくわからないから、人にも当然まったく見えない自分の部分です。無意識の世界で、ここを意識の中に持ってくることが多くなればなるほど、自分を造り上げているものをより深く知ることができるようになります。恐らく、本当に自分をよく知るというのは、この部分を開拓していくことなのでしょう。睡眠中に見る夢は、この無意識の世界への橋になるものだとスイスの精神科医・心理学者のカール・ユングは言っています。
ジョハリの窓は、対人関係をより柔軟にするための訓練やコミュニケーションにおいて自分の壁を低くして人と交流しシェアする部分を広げるための訓練の基盤として使われますが、こういう4つの窓を通して自分により意識を向けること自体とても興味深いことです。
留学してきた生徒たちは、「自分」というものについて、いろいろ考えることになります。一つ目の自分にわかっている自分ですら、オーストラリアで出会った新しい人々にとっては、毎日のひとつひとつの行動・言動が発見なので、最初の数週間は明確には見えない部分です。だからこそ余計に、交流を通して自分をシェアすることを強く求められます。ということは、生徒の側に立てば、3つ目の自分をどれだけ出せるかをテストされることになります。言葉がまだままならない時期だけに、二重に三重に生徒にとっては難しいことです。
日本では、部活で忙しい、勉強で忙しいと、シェアしなくても済んでいたことを、ここではシェアするよう求められます。このシェアの部分が上手に行くと、ホストはとてもハッピーです。それ故に、このシェアの部分が少なければ少ないほど、ホストは距離を感じてしまいます。その距離は、生徒自身の居心地の良さ・悪さにも関わってくるわけです。
ホストだけでなく、学校の授業においても、生徒の心や頭の中にある考えや気持ちを表現することが求められます。シェアすればするほど、授業は楽しくなります。現地の生徒たちもそれを大歓迎します。少なければ少ないほど、授業への参加は薄くなります。
ここで重要になるのが姿勢なのです。言葉がなくても、混じる、家族の一員になりたい、学校の一生徒になりたい、という熱意を示すことが決定的に大事になってきます。その一方で、日本語で友達と楽しい会話ができたら、瞬時にして英語だけの息苦しさから抜け出せ、ストレスの解消となります。これは、恐ろしく大きな誘惑です。なぜなら、ホストとの時間を長く持ち英語での会話をすればするほど、英語の上達は早くなります。日本語での楽しい時間を持てば持つほど、英語での時間が苦痛となります。でも、ストレスの解消は、健全な生活を保つためには、とても重要なことです。このバランスをどう保つかということが、生徒たちにとって、本当に課題なのです。
ジョハリの窓の3つ目のシェアの部分をより多くしていくこと、そして、4つ目の無意識の部分により光をあて少しでも自分自身の深層部分の理解を深めていくことが、ICETのプログラムの目的の一つです。