避けて通れない難題 (2)
投稿日:2013年7月13日
捕鯨については、できれば、私も避けて通りたい問題です。
でも、日本人であって、オーストラリアに暮らしている以上、決して、避けて通れない問題なのです。そう、問題なのです。
何が問題かというと、この議論は、平行線に進んでいて、一向に解決にならないからです。それ故に、こんなに良い関係を保っているふたつの国が、国際司法裁判所で争うようなことになっているのです。
ビクトリア州の南氷洋に面した海岸にワーナンブールという町があります。風が強いのですが、きれいな町です。5月から10月頃にかけて、町は、ウェール・ウォッチングでにぎわいます。特に、2年か3年に一度戻ってくるという尻尾が割れているクジラを見つけることを楽しみにしている人たちもいるということです。大勢の人々がビーチに並び、クジラの姿を見える瞬間を何時間も待つのですが、姿が見えれば歓声があがり、潮でも吹けば、大歓声です。
こんな光景を見ていると、この町が、かつては、捕鯨の中心地であり、捕鯨に関係する産業で富んでいたなど、到底信じられません。1986年に停止してから、クジラは、確実にこのビーチの近くを通るようになり、時には、入り江のあるような場所で、クジラの赤ちゃんを産み落とすこともあります。
そして、今は、ウェール・ウォッチングの観光が主たる産業になるまで発展しているのです。
シドニーでも同じです。シドニーの海岸にクジラが来ると、特に、子連れであれば、人々は、ラジオ中継までして様子を知らせます。クジラの動きによって、海岸沿いの路上の人々も動きます。港のある海外では、ウェール・ウォッチング用のグルーズ船が出ています。
それほどに、クジラは、みんなの人気者なのです。その美しさと壮大さと、特にマオリ族の人々にとっては、海の守り神として。
1986年以降、捕鯨を続けている国は、日本だけではありません。ノルウェー、デンマーク、ロシア、カンボディア、モロッコ、アイスランドなども捕鯨をしています。では、なぜ、日本だけが、「残酷だ」「違法だ」「嘘つきだ」と非難されるのでしょうか。
それは、「科学調査」という名目で、また、減少している魚を食べるクジラを捕獲することで魚の現象を少しでも食い止めることができるからだとして、800頭近いクジラを殺しているからです。
もうひとつは、クジラを殺す方法が残虐であるからです。ハプーンというモリで皮膚に穴を開け、体内で爆発物を爆破させるというものです。
1994年にオーストラリアは、日本の南氷洋での捕鯨を止めさせるために、南極に捕鯨のできない聖域を設けました。でも、日本は、引き続き、そこに捕鯨に出かけます。なぜならば、オーストラリアが定めた聖域は、法的な束縛がないものだからです。
2005年に捕獲数を千頭以上にあげたことで、日本は、多くの国々からさらなる非難を受けることになりました。でも、IWC(国際捕鯨委員会)では、日本の捕鯨を続ける投票を得ることができています。オーストラリア側の説明によれば、カリブ海などの小さな島も1国が1票を持ち、日本が漁船や漁の支援をすることで、日本の捕鯨継続に賛成の票をもらっているからだとしています。
オーストラリアは、軍艦を送って日本の捕鯨船を阻止すべきだという意見も毎年のようにのぼっています。しかしながら、日本との外交を大事にしたい豪政府は、あくまでも話し合いでこの問題を解決しようとしてきました。環境保護団体のシー・シェパードなどが、なんとかして止めようとして「妨害」と判断されるような行為に出始めたのは、比較的最近のことです。
日本サイドは、どうしても捕鯨を止めようとはしません。そこで、この国際司法裁判所で、日本の「科学調査」と称する捕鯨は、実は、商業目的のものであり、そうだとすれば、捕鯨の国際法に違反することを証明し、捕鯨を辞めさせたいというのが、オーストラリアが裁判に持っていった理由と目的です。
どのような結果が出て、どのような解決になるのでしょう・・・