第二言語の習得
投稿日:2013年8月26日
言語の発達は、文化の中で起こります。
生まれた時に周りの環境にある言語が自分の第一言語となります。それが、何語であっても。
日本から来た教育研修訪問団の先生がオーストラリアのある幼稚園を訪問して、「えっ、こんな小さな子でも英語しゃべっている!!」と驚嘆したという笑い話がありますが、日本で日本語環境の中でEnglishを習う身となれば、笑うに笑えぬ苦労があるわけです。
言語は、生活、文化がそこにあって初めて自然に体で覚えることができます。文法や構文などのシンタックスは、あとから付け加える形でしかありません。日本人の英語力がその努力と時間の注入に比較して伸びないのは、日本人の知力が低いからでは全くなく、導入の仕方が上手になる方法ではないからです。問題は、それがわかっていても、その教育方法、導入方法を変えないところに問題があるのです。
文法という形から先に入ってしまうために、自然体の中で言語を広げていくことが妨げられてしまいます。英語は、文法で覚えるものだという固定概念を信じきってしまっていて、その枠から抜け出ることができません。だから、文法が定かでないと、実際の会話の中で、単語だけすらも口に出すことができない、というとんでもない呪縛に縛られてしまうのです。
その呪縛から解かれると、初めて、留学生活において、文化の中で英語を習得するということができるようになります。意識下での人間の信じ込みというものは、本当に恐ろしいものです。
日本で、日本語のフィルターを通さない英語教育が、幼稚園から行われるようになっていることは、極めて喜ばしいことです。
テストシステムにも同じことが言えます。テストが、どういう目的で何を測るかを誰がどういう基準で決めたのかもわからないまま、テストを受けさせられ、そのテストの結果にみんなが一喜一憂します。その点数が絶対的なものだと信じ込まされているからです。なぜなら、学校なり組織が勝手にここまで達すべきと決めた点数があり、それに達しないと十分ではないという意識と思い込みが、組織サイドにも、子供の側にも刷り込まれ、教育システムも、企業も、そうした点数がまるでその人物の全体を測るかのごとく、疑問を抱くこともなく選択の基準として使っています。
まあ、これだけ地球人口が多いと、そういうシステム無しには物事も社会も回っていかないからそういう水準を作らざるを得ないのでしょうが、そうした基準で測られた結果、本当に優れた資質をたくさん持っていても、テストという点数に出ないと、学校だけでなく、その後の生活においても無意識に、自分はダメ、できないというレッテルを自ら貼ってしまう結果となってしまうことが往々にしてあることは、悲劇です。一旦そのレッテルが貼られてしまうと、それを剥がすことは、ほぼ不可能に近いものとなります。
言語学習において大事なことは、それが何語であってもいいので、論理的な思考ができるだけの語彙と知識と思考力を培うことだといろいろなところで言われています。これが無いと、論理的な思考ができないために、知的な喜びを知るに至らないだけでなく、社会において極めて不利な立場に置かれることになります。
第一言語でそのレベルに達している人は、第二言語でそのレベルに達することが十分に可能です。
第一言語でそのレベルに達していない人が、第二言語でそれができるようになるケースは、この20年間、ICETの中では出会った例がありません。
自分の母語である日本語をしっかりと身につけておくべきというのは、こういうことからも来ているのでしょう。
ICETには、CAPDという日本語でする授業があり、3年間プログラムにはJBSという日本語の授業があるのは、母語である日本語を忘れてしまうことなく、自分の見解を積み上げ、意見を口頭でも書面でも自在に表現できるようさらに磨きをかけることを目的としています。それでこそ、日本語と英語が両輪となるバイリンガルを育てることができます。
第二言語習得に関する教科書を読んでいて、ICETの生徒たちに関連するものがあったと、卒業生からメールが届きました。
ゴンサレスという学者がイリノイとカリフォルニアでメキシコから移民してきた子供たちの英語習得について研究したところ、 メキシコで基礎学習をしてきた子供たちのほうが、第2言語の環境に直接放り込まれた子供たちよりも、6年生になる頃までには、より高い読解力を得たという結果が出たというものです。そして、早い時期に嫌な思いをしたり、あるいは、英語環境の文化にとけ込まなければならないプレッシャーに晒されている場合は、それが言語習得にマイナスに働く。同じことがカナダの言語学者カミンズによって、日本人の子供に関しての研究結果がある、というものです。
カミンズは、トロント大学の教授ですが、移民の子供たちが英語環境の中で同レベルの子供たちと学習する場合、学習が相当にできるだけの言語能力を習得するには、5年から7年かかると言っています。ICETの生徒たちの多くが、わずか1、2年で第二言語の英語で現地の生徒たちと同様のレベルで学習できるようになるという事実は、日本語での学習基礎能力を高く持っているということに加え、ICETが提供している英語学習が極めて効果的なものであることを証明するものです。
しかしながら、システムがあれば、誰でも成功するというものでは、残念ながら、ありません。生徒の熱意、努力の継続、学習に対する自立心、向上心などがそろって初めて、大きな成長、成功が可能となります。システムがどんなに良くても、それだけでは空っぽです。それを上手に使える生徒に成功の喜びが待っているのです。