学習方法の拡大
投稿日:2013年9月4日
ある生徒が、「英語を一生懸命勉強しているのに、それがテストに出ない。どうやって勉強したらいいか?」と質問してきました。
よくぞ、聞いてくれた、というところです。
一生懸命勉強しているのが結果に反映されないというのであれば、やり方の効率が悪い、的を得ていないということです。ピアノが上手になりたいのに、バイオリンを一生懸命練習しているようなものです。
英語を教えてみえる先生たちからは、普段から勉強方法に関していろいろなアドバイスが出されています。効果的な学習方法は生徒によって違いますが、基本的に共通してみなが同様に必要とすることがあります。それは、言語の学習の場合には、聞く、読む、書く、話すの四つの分野を積極的に取り入れることです。
どういう方法があるか、どれが一番自分に適した方法か、といったことは、そのための時間を設けて、生徒たちにアドバイスが出されています。また、普段の授業の終わりにも、いろいろなアドバイスが出されています。あとは、実践のみなのですが、ここに落とし穴があるのです。
rote(ロート)という言葉があります。これは、ひたすら繰り返すことで記憶し、その記憶をテストされ、記憶の積み上げが知識として重宝されるという学習方法です。東南アジアの多くの国々、そして、日本の教育現場において中心的に用いられている方法です。集団が同様に学習する方法です。
一方、オーストラリアなど西洋の教育が力を入れているのは、応用、実践、問題解決能力、自主性、自立性、学習の自己責任、独創性、革新性などです。与えられるもの以外にどうやって自ら知識を求めるのか、得た知識をどう使うのかというところに重点があるのです。それは、とりもなおさず、個人にかかってきます。個人を活かすものです。
与えられた課題、枠の中に留まるのではなく、そこから出て、自分を多いに使って鍛えよ、というものです。英語学習にこれを充当すると、上記の4つの分野を活用するために、どんどん自分で生活範囲を広げ、活動範囲を広げ、自ら表に飛び出し、人々との交流を求め、本を読み、テレビを見、メモを取り、自分の感想を述べ、意見交換をし、人々の会話に混じり、自らも積極的に情報を提供し、英語の音楽を聴き、リリックをメロディーとともに覚え、理解し使い、エッセイやジャーナルを書きと、そこには、応用と実践が入ってきます。
授業では、この4つの分野を鍛えるために、いろいろな工夫がなされています。生徒たちは、それにはよく応えます。与えられたものには、応えるのです。でも、本当に上手になるためには、その後に、自分が何をするか、です。この部分が、結果を大きく左右するところです。これを実践している生徒たちは、自他ともに認めるすばらしい効果を身に付けていきます。
質問してきた生徒には、「自分が今している学習方法を先生にお話しし、どんな改善ができるかお聞きしていらっしゃい」と伝えました。早速に、英語の先生のアドバイスを求めに行きました。その生徒が留まっていたところは、読んで覚えるというroteの部分で留まっていました。一生懸命しているのは、覚えることであって、それを自ら応用し使い実践するという部分にまだ展開されていないのです。同じことが、その場を与えられたらいくらでもできるのですが、与えられるのではなく、自ら求める、ということに自分が突き進むというところで停滞してしまっていました。
こちらでテストされるものは、語彙やフレーズのように覚えたものの知識もありますが、それはごくわずかの部分であって、あとは、知識の応用です。だから、読んで覚えたものが反映されるのは限られた部分でしかありません。テストの結果は、自分の時間の注入を反映するものでない、と感じるのは無理のないことです。
枠から一歩出たらどうしていいかわからない、動けない、というのは、実は、この生徒だけの問題ではなく、多くの日本人生徒が持つ特性です。
アドバイスをいくら与えられても、それを実践することがどのくらい難しいかということは、この例でもよくわかります。自ら、どうしたらもっと上手になるかと、アドバイスを求めてきたこの生徒。その一歩を自分で踏み出したのですから、これからきっと、大きく変わっていくことでしょう。今まで積み上げてきたものが、生き生きと表出されることができれば、覚えなきゃ、覚えなきゃ、というプレッシャーから解放され、言語を使って学ぶことの楽しさを体いっぱいに感じることができるようになるでしょう。
留学の利点は、シナリオが無いということです。シナリオが無いからこそ、そこに自分が自由に絵を描いていける空間がたくさんあるのですが、シナリオが無いから動けないということになると、目の前にある自分を活かす機会をただただ見過ごしてしまうことになります。
シナリオの無い空間を、自分はどんな色で、どんな形で塗っていくのか。留学の醍醐味を多いに活用して欲しいですね。